伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

海洋プラスチックごみ問題の真実 マイクロプラスチックの実態と未来予測

2020-10-14 22:01:57 | 自然科学・工学系
 海洋を漂い漂着するプラスチックごみの実態、毒性、生態系への影響等を説明し、プラスチックごみ削減のための取り組み等を論じる本。
 プラスチックごみが海洋から浜辺に漂着して集積し、浜辺で紫外線や温度差、摩擦等により微細化し、それがまた波にさらわれて海洋を漂うというお話にまず目を惹かれます。浜辺を埋め尽くすプラスチックごみがただ溜まり続けるのではなく、破砕されて微細化しながら入れ替わり海洋にさらに拡散していくというのは、なかなかに悩ましい事実です。環境庁の調査で海岸の漂着ごみで最も多かったのがボトルのキャップだった(僅差の2位がロープ)というのも驚きです(28ページ)。漁業廃棄物や産業廃棄物ではなく、まさに生活ごみが海洋ごみのいちばんの起源になっているというのです(もっとも、調査対象が2.5cm以上のごみに限定されていることがその結果を導く要因となっているところもあるでしょうけれども)。
 管理されずに捨てられたプラスチックごみの国別重量では中国を始めとするアジア諸国が圧倒的に上位を占め(146ページ)、その結果、日本近海はマイクロプラスチックのホットスポットとなっているそうです(89~102ページ)。他の海域よりも1桁2桁違うというのです。
 さらに、破砕されて径が小さくなったマイクロプラスチックは径が小さくなるにつれて個数が多くなるはずなのに、1ミリを下回るあたりから海面付近での調査で見つかる個数が不相当に減少していて、それがどこに行っているのか(生物に誤食されるのか、砂浜に滞留するのか、海底に沈むのか)研究者にもわからない(102~105ページ)というのが不気味です。
 マイクロプラスチックの誤食による生態系への影響については、著者の、査読論文に掲載されたこと以外は語らないという方針(70~71ページ)もあって、影響があるかどうかはまだどちらとも言えないという姿勢を取っています。近年は、サンマとか鰯を焼いて食べるとき、腹部にプラスチック粒を見つけることも少なくなく、丸干しだったら気づかずに食べてるよなぁと思い、少し気味が悪いところではあるのですが。
 マイクロプラスチック問題について、様々な点を丁寧に解説していて、かつ語り口も読みやすく一般向けにもいい本だと思います。


磯辺篤彦 DOJIN選書 2020年7月30日発行 
コメント
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