子どもの人生と生活のさまざまな場面、特に処遇等を決定する場面で、子どもの気持ちと意見を聞き出し、代弁・助言する者あるいはそれを供給・保障するシステムの必要性を説く本。
外国と日本の子どもが遭遇する事例や制度等を通じて、子どもの声を聴きだし代弁する仕組みが必要だということを述べ続けていて、そのことだけはわかるのですが、それ以上に具体的に著者がどのようなシステムを想定し作り出そうとしているのかが今ひとつ見えません。諸外国の制度の説明も、いろいろな制度が作られていること自体は紹介されているのですが、今ひとつ掘り下げられていない感があります。
著者は、それこそあらゆる分野、局面での必要性を論じているのですが、では誰(どのような属性の者:弁護士か、ソーシャルワーカーか、臨床心理士か)がそれを担うのか、どこに窓口を置くべきなのか、その規模は…といった提言がまったくありません。著者が2009年から2010年にかけてイギリスで研究した世界で最も先進的な「独立系アドボケイト」(4ページ)も「後で詳しく」述べられているところでも、スタッフ26名とされています(58ページ:ちょっとそこも精密に書かれている感じではないので、別の団体だったりするのかも知れませんが)。日本での具体的なシステムの構築を構想するのであれば、諸外国のシステムをより具体的に紹介し、日本で実現するとすればどのような規模でやるべきなのかを論じるべきでしょうし、昨今、児童相談所への弁護士の常駐が検討され始めていることとどうリンクさせていくのか等にも言及していくことが有益に思えます。どのような場を対象とするのかも、その構想する規模に応じて絞り込んでいった方がいいでしょう。
そういう実現に向けた現実的な構想や提言が見られないというところが残念に思えました。
堀正嗣 岩波ブックレット 2020年9月4日発行
外国と日本の子どもが遭遇する事例や制度等を通じて、子どもの声を聴きだし代弁する仕組みが必要だということを述べ続けていて、そのことだけはわかるのですが、それ以上に具体的に著者がどのようなシステムを想定し作り出そうとしているのかが今ひとつ見えません。諸外国の制度の説明も、いろいろな制度が作られていること自体は紹介されているのですが、今ひとつ掘り下げられていない感があります。
著者は、それこそあらゆる分野、局面での必要性を論じているのですが、では誰(どのような属性の者:弁護士か、ソーシャルワーカーか、臨床心理士か)がそれを担うのか、どこに窓口を置くべきなのか、その規模は…といった提言がまったくありません。著者が2009年から2010年にかけてイギリスで研究した世界で最も先進的な「独立系アドボケイト」(4ページ)も「後で詳しく」述べられているところでも、スタッフ26名とされています(58ページ:ちょっとそこも精密に書かれている感じではないので、別の団体だったりするのかも知れませんが)。日本での具体的なシステムの構築を構想するのであれば、諸外国のシステムをより具体的に紹介し、日本で実現するとすればどのような規模でやるべきなのかを論じるべきでしょうし、昨今、児童相談所への弁護士の常駐が検討され始めていることとどうリンクさせていくのか等にも言及していくことが有益に思えます。どのような場を対象とするのかも、その構想する規模に応じて絞り込んでいった方がいいでしょう。
そういう実現に向けた現実的な構想や提言が見られないというところが残念に思えました。
堀正嗣 岩波ブックレット 2020年9月4日発行