伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。今年も目標達成!

私を見て、ぎゅっと愛して 上下

2021-05-05 20:19:17 | ノンフィクション
 婚約者がいながら出会い系サイトで漁った男たちに乱暴に扱われるセックスにふけることに喜びを感じ、それをブログに書き多数の読者からの反応に恍惚となるという著者のブログ経験を出版した本。
 初期の売りになっている著者の出会い系サイトを利用した多数の男たちとのセックス、セックス依存症経験は、母親との関係、幼い頃に母親に愛されなかった経験が原因とされていますが、それが発覚したわけでもないのに婚約者の心が離れて著者が追う立場になるや、影を潜めてしまいます。むしろ、婚約者から愛されているのにいけない私、みたいな背徳感、スリルにのぼせていた、いい気になっていたんじゃないかとも思えてしまいます。
 親友と婚約者ができてしまったとき、親友を全然恨んでいない、自分にとって親友が大事、その幸せを願うというのですが、そうだったらそれを1日2万件もヒットしているというブログに、それも本人に確認したり話し合う前に書きますか?そんなに読者がいるなら、当然、いくら匿名でも、周囲の人だって読んでいるでしょうし、関係者に伝わるでしょうし、仮にそのときすぐにそうならなくてもいつかは発覚するでしょう。書くこと自体が復讐なのか、あるいは親友より何より書くことの恍惚が優先なのか。それがセックス依存症以上に快感だったんでしょうね。
 周囲の人、特に弟に、婚約者や「親友」を声高に詰らせ、自分はそれをなだめる役に回る。高校の時に、「土左日記」の最後に紀貫之一行が都に戻り、人に託した自宅が荒れ果てているのを見て、家来が声高に文句をいうのを紀貫之はそれをなだめるという場面で、古文の先生が、家来が言ってくれるからそれで気が済んで鷹揚に振る舞ってるんですねとコメントしたのを聞いて、なるほどと思ったのを思い出しました。


七井翔子 河出文庫 2021年2月20日発行(単行本は2006年)
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