伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

「思い」を届ける遺言書

2021-12-04 00:38:42 | 実用書・ビジネス書
 遺言書を作っておかないとどういうトラブルが起こりがちか、へたな遺言書を作るとどういうトラブルが起こるか、具体的に遺言書を作るときはどういうことを考えるべきか、現実的にはどういう手順で遺言書を作ればいいかなどをわかりやすく説明した本。
 いろいろなことに目が配られていて、遺言を作成しようと考える人に、何を考えるべきか、どういうことに注意すべきか、どうやって作ればいいか等をイメージさせるのにはとてもいい本だと思います。
 タイトルにある「思い」を届けるという点は、前半で多用されている「付言事項」の活用(47ページ、52ページ、53ページ、64ページ等)と、「公平感」を大切にするとか、もらう人のことも考える(100~102ページ)あたりくらいで、タイトルに惹かれて読むと、ちょっと印象が違うかもしれませんし、弁護士に相談・依頼しましょうという営業色が強い(著者は弁護士)感じはあります。
 推定相続人の廃除(虐待・非行を理由とする)については、「ただし、廃除は必ず認められるわけではありません」(87ページ)という表現は期待を持たせすぎのように感じられますし、廃除の効果で「ただし、廃除された人の相続人が代わりに相続する権利を取得します」(86ページ)というのもちょっとぎょっとします(先に死んだり相続放棄した場合と同様に、子がいれば代襲相続があるということです。配偶者がいた場合に配偶者が代わりに相続権を取得したりはしません。似たようなことに見えるかも知れませんが、法律家の立場では、こういう説明はないだろと思ってしまいます)。
 そういった点など、法的な意味での正確性には、ちょっと不安を感じるところがありますが、わかりやすさと一般の人が知りたいと思われることが痒いところに手が届く感じで書かれているところは推したい本だと思いました。


本田桂子 技術評論社 2021年9月24日発行
コメント
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