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伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

コロナ黙示録

2021-12-12 23:34:49 | 小説
 「チーム・バチスタの栄光」に始まる「田口・白鳥シリーズ」とも「東城大学シリーズ」とも「桜宮サーガ」とも呼ばれるシリーズの体裁と登場人物を使った新型コロナウィルス感染拡大とそれに対する安倍政権と官僚・医療専門家たちの対応のまずさ・無策ぶりをあざ笑う政治小説。
 医師である作者の目から、政治家と官僚の無能ぶりとともに口先では国民の命を守るなどと言いながらその実医療体制の充実や感染拡大防止のための実効的な措置、ワクチンの開発などには精力も予算も振り向けず、お友達と大企業の利益のためにだけ予算を使っている様子が辛辣に描かれていて、なるほどなと思いますし、安倍政権と維新が嫌いな者にとっては溜飲が下がるところはあります。検査・免疫・ワクチン関係の話も勉強になります。
 また、安倍・菅への忖度で提灯報道ばかりのマスコミの現状を見るとき、このような作品が安倍晋三の首相在任中に(何とか間に合って)出版されたことは、それ自体快挙なのかも知れません。
 しかし、小説としてみたときには、作者の年来の主張・悲願のAi (Autopsy imaging) (死亡時画像診断)の普及がコロナによる死亡の判定や診断に役立つという話がそろりと出ているとか、シリーズの登場人物を登場させてかろうじてエピソードは作って話は進めているというくらいで、中途半端感があります。Aiの利用の話は作者の情熱が下がったか飽きられていると自覚しているのかこの情勢下では不謹慎と受け止められると考えたのかでしょうけれど。
 作品の終わりが中途半端な感じがするのは、現在進行中のことがらを描いているためという面もあり、また中途半端な時期までの話にしたから安倍首相在任中に出版できたという面もあり、仕方ないかなと思いますが、それにしても、作品の中枢であるかのように扱った「政策集団・梁山泊」を解散するという理由とタイミングは、現実世界ではさまざまな要素で判断されることではありますが、小説の世界では全然スッキリしないし、ぶつ切れ・唐突感に満ち、説得力を感じません。


海堂尊 宝島社 2020年7月24日発行
コメント
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