一流企業に勤める東大出の血の繋がらない「父親」森宮壮介と暮らす高校生森宮優子の日々の思いを、生父水戸とブラジル転勤で離れて後妻の梨花と暮らし、梨花の結婚に合わせて泉ヶ原、森宮と親が替わっていった過去を振り返りながら描いた小説。
基本的に、一生懸命父親して料理を作り続ける「森宮さん」とその愛情をやや持て余しつつも感謝して受け止める優子ちゃんのズレながらもほのぼのとした会話で進行させ、それを読ませる作品だと思います。娘を持つ父の身には、合唱祭前夜に優子ちゃんのピアノ伴奏で歌いまくる森宮さんの場面(244~253ページ)が隠れたクライマックスのように思え、ジーンときました。
タイトルが「そして、バトンは渡された」で、ラストが結婚式で森宮さんが早瀬くんに「自分の知らない大きな未来へとバトンを渡す時だ」(420ページ)って…映画のラストでも強く感じたのだけれど、そして結婚式という儀式ではそのような考えがはびこりまたそういう演出がなされがちだけれど、新婦は、花嫁の父から新郎に渡される「バトン」なのか。父の庇護の下から夫の庇護の下に手渡されるものなのか。幼き日は、親が替わっていくのをなすすべもなく運命に抗えずに来たという設定でありそういう描き方がなされているけれど、それは子どもだからそのとおりだと思うし、違和感はありません。しかし、成人して自分の意思で自分の選択で結婚する女性を、一人前扱いせず、さらには物扱いで「渡す」という表現はいかがなものか。せっかく型にはまらない親子関係・人間関係を爽やかに描いた作品なのに、このラストは、そしてこういうタイトルをつけるのは、私には残念に思えてなりません。
瀬尾まいこ 文春文庫 2020年9月10日発行(単行本は201年2月)
本屋大賞受賞作
基本的に、一生懸命父親して料理を作り続ける「森宮さん」とその愛情をやや持て余しつつも感謝して受け止める優子ちゃんのズレながらもほのぼのとした会話で進行させ、それを読ませる作品だと思います。娘を持つ父の身には、合唱祭前夜に優子ちゃんのピアノ伴奏で歌いまくる森宮さんの場面(244~253ページ)が隠れたクライマックスのように思え、ジーンときました。
タイトルが「そして、バトンは渡された」で、ラストが結婚式で森宮さんが早瀬くんに「自分の知らない大きな未来へとバトンを渡す時だ」(420ページ)って…映画のラストでも強く感じたのだけれど、そして結婚式という儀式ではそのような考えがはびこりまたそういう演出がなされがちだけれど、新婦は、花嫁の父から新郎に渡される「バトン」なのか。父の庇護の下から夫の庇護の下に手渡されるものなのか。幼き日は、親が替わっていくのをなすすべもなく運命に抗えずに来たという設定でありそういう描き方がなされているけれど、それは子どもだからそのとおりだと思うし、違和感はありません。しかし、成人して自分の意思で自分の選択で結婚する女性を、一人前扱いせず、さらには物扱いで「渡す」という表現はいかがなものか。せっかく型にはまらない親子関係・人間関係を爽やかに描いた作品なのに、このラストは、そしてこういうタイトルをつけるのは、私には残念に思えてなりません。
瀬尾まいこ 文春文庫 2020年9月10日発行(単行本は201年2月)
本屋大賞受賞作