酔って暴力を振るう父親に対し、13歳の時斧で頭を割って父親を半身不随にし、その後伯母の家で暮らして、今は東京で建築写真家の助手をしているものの時折父親を殺す夢を見てうなされている横沢史也が、かかった整形外科で看護師をしている生まれてすぐ施設前に捨てられ施設で育った過去を持つ梓と名乗る女と出会い、目を背けてきた過去と向き合っていくサバイバー青春小説。
底辺層でもがき懸命に生きる人・カップルの姿を掬い出すのがうまい作者だと、思う。そしてそういう人たちが、手放しでは喜べないとしても前向きになって終われる話は、どこかホッとする。そういう読後感を持ちました。
「不幸な家のパターンってどうして似ているんだろ。幸福ほどバリエーションがないのがまた不幸だよね……」(125~126ページ)という梓の台詞は、アンナ・カレーニナ(「幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである。」)への異議申立なんでしょうね。目立たせずにさらっと入れているのに好感を持てました。
窪美澄 2021年7月30日発行 朝日新聞出版
「週刊朝日」連載
底辺層でもがき懸命に生きる人・カップルの姿を掬い出すのがうまい作者だと、思う。そしてそういう人たちが、手放しでは喜べないとしても前向きになって終われる話は、どこかホッとする。そういう読後感を持ちました。
「不幸な家のパターンってどうして似ているんだろ。幸福ほどバリエーションがないのがまた不幸だよね……」(125~126ページ)という梓の台詞は、アンナ・カレーニナ(「幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである。」)への異議申立なんでしょうね。目立たせずにさらっと入れているのに好感を持てました。
窪美澄 2021年7月30日発行 朝日新聞出版
「週刊朝日」連載