文久2年(1862年)、越後丹生山3万石松平家は、25万両の借金を抱え、利息だけでも年間3万両、近年の歳入は年間せいぜい1万両という絶望的な状況にあったが、代々の当主はこれを隠し、というよりも知らないままに借金を増やしてきており、第12代当主はこの実情を目の当たりにして返済を先送りにして追加の借入金を隠して溜め込み計画倒産を画策、松平家故にお取り潰し(改易)でも家族はどこかの裕福な大名にお預けと踏んで、家来には隠し溜めた資産で一時金を配ればよいと考え、かつて村娘に産ませた4男坊小四郎を第13代当主に仕立て上げ、詰め腹を切らせることにして自らは隠居して悠々自適の生活を送っていた。家督相続後、江戸城でのお目見え後に老中に居残りを命じられて献上品が目録のみで支払をしていないことが3度も続いていると知らされたことを機に勘定役らを問い詰めて実情を知った小四郎は…というお話。
映画(2023年6月23日公開:映画の見ての感想はこちら→映画「大名倒産」)の予告編を見てから読んだので、小四郎が倹約・特産品奨励等を進めて、もちろんあの手この手の奇手や禁じ手に相当な幸運もあって問題を解決するという展開を予想しました。しかし、小四郎らの奮闘は描かれてはいるもののときどき断片的に出てくるという程度で、小四郎主役というのではなく、群像劇的な構成・展開ですし、神々が相当数・相当な頻度で登場して小四郎の努力よりも神の力に左右されるところが大きいという印象です。コメディ仕立てですし、そもそもどこをどう頑張っても破産(倒産)しかないでしょという設定にしてしまった以上、人間の努力で解決することはできず、人間の努力で解決したと描いたらあまりにも空々しい(漫画っぽい)ということでそうしているのでしょうけれども、私は、神様抜きでやって欲しかったなと思います。大黒屋幸兵衛や仙藤利右衛門、鴻池善右衛門などの大物を引っ張り出すのなら、どうやって協力させたか、協力する気になったのか、その協力で具体的にどうなったのかをきちんと描かないと説得力がないと思うのですが、そこが「神の手」を使っているからでしょう、詰めが甘い感じがします。
作者の位置づけでは「バカップル」の新次郎を慕うお初がいじらしくも可愛い。間垣作兵衛となつとか、正心坊とか、微笑ましい脇キャラにも恵まれています。
浅田次郎 文藝春秋 2019年12月10日発行
「文藝春秋」連載
映画(2023年6月23日公開:映画の見ての感想はこちら→映画「大名倒産」)の予告編を見てから読んだので、小四郎が倹約・特産品奨励等を進めて、もちろんあの手この手の奇手や禁じ手に相当な幸運もあって問題を解決するという展開を予想しました。しかし、小四郎らの奮闘は描かれてはいるもののときどき断片的に出てくるという程度で、小四郎主役というのではなく、群像劇的な構成・展開ですし、神々が相当数・相当な頻度で登場して小四郎の努力よりも神の力に左右されるところが大きいという印象です。コメディ仕立てですし、そもそもどこをどう頑張っても破産(倒産)しかないでしょという設定にしてしまった以上、人間の努力で解決することはできず、人間の努力で解決したと描いたらあまりにも空々しい(漫画っぽい)ということでそうしているのでしょうけれども、私は、神様抜きでやって欲しかったなと思います。大黒屋幸兵衛や仙藤利右衛門、鴻池善右衛門などの大物を引っ張り出すのなら、どうやって協力させたか、協力する気になったのか、その協力で具体的にどうなったのかをきちんと描かないと説得力がないと思うのですが、そこが「神の手」を使っているからでしょう、詰めが甘い感じがします。
作者の位置づけでは「バカップル」の新次郎を慕うお初がいじらしくも可愛い。間垣作兵衛となつとか、正心坊とか、微笑ましい脇キャラにも恵まれています。
浅田次郎 文藝春秋 2019年12月10日発行
「文藝春秋」連載
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