労働法の各領域について一般向けに解説した本。
各章の冒頭に置かれた経営者の鈴木と就活で内定を得たばかりの学生山本らのかけあいを除けば、オーソドックスでわかりやすい解説です。法律業界外の一般の方が労働法の概要を学ぶにはなかなかよい本かと思いました。
慶應義塾大学出版会の本なので著者は学者かと思ったのですが、厚生労働省の官僚で3年間だけ慶応大学に出向して准教授として講義をしていたということです。著者の主張が正しいという根拠を厚労省のモデル就業規則の説明等の厚労省の文書に記載されているということに求めている(厚労省がそう言っているからそれでいいんだ)場面が少し鼻につきます。またそういう著者の属性から、弁護士の目からは、厚労省の所管事項の労働時間(過労死対策)、割増賃金(残業代)、育休促進、ハラスメント防止、労災あたりには熱く、解雇あたりは冷たい(使用者側に寄った感性も)という印象です。派遣労働者(これはもろに厚労省の所管ですが)の雇止めや無期転換に関してはまったく触れていないというのも、興味深いところです。
2023年11月出版のこの本に、雇用保険の求職者給付(失業手当)に関して、自己都合退職の場合は最初の3か月間は支給されない(待機期間)という記述があります(224ページ)。正当な理由のない自己都合退職者の待機期間(給付制限)は、2020年10月1日以降の退職者については、過去5年間に既に2回以上自己都合退職している場合を除き、2か月間になっています。各章冒頭のやりとりになぞらえれば、「『弘法も筆の誤り』ですね。」「面目ない。」というところでしょうか。弁護士であれば、雇用保険のことまではよく勉強してなくて知らない人も多いですが、制度改正から3年も経っているのに現役の厚労省官僚が知らないとなると…ハローワークはもっと強力に広報した方がいいでしょうね。
星田淳也 慶應義塾大学出版会 2023年11月20日発行
各章の冒頭に置かれた経営者の鈴木と就活で内定を得たばかりの学生山本らのかけあいを除けば、オーソドックスでわかりやすい解説です。法律業界外の一般の方が労働法の概要を学ぶにはなかなかよい本かと思いました。
慶應義塾大学出版会の本なので著者は学者かと思ったのですが、厚生労働省の官僚で3年間だけ慶応大学に出向して准教授として講義をしていたということです。著者の主張が正しいという根拠を厚労省のモデル就業規則の説明等の厚労省の文書に記載されているということに求めている(厚労省がそう言っているからそれでいいんだ)場面が少し鼻につきます。またそういう著者の属性から、弁護士の目からは、厚労省の所管事項の労働時間(過労死対策)、割増賃金(残業代)、育休促進、ハラスメント防止、労災あたりには熱く、解雇あたりは冷たい(使用者側に寄った感性も)という印象です。派遣労働者(これはもろに厚労省の所管ですが)の雇止めや無期転換に関してはまったく触れていないというのも、興味深いところです。
2023年11月出版のこの本に、雇用保険の求職者給付(失業手当)に関して、自己都合退職の場合は最初の3か月間は支給されない(待機期間)という記述があります(224ページ)。正当な理由のない自己都合退職者の待機期間(給付制限)は、2020年10月1日以降の退職者については、過去5年間に既に2回以上自己都合退職している場合を除き、2か月間になっています。各章冒頭のやりとりになぞらえれば、「『弘法も筆の誤り』ですね。」「面目ない。」というところでしょうか。弁護士であれば、雇用保険のことまではよく勉強してなくて知らない人も多いですが、制度改正から3年も経っているのに現役の厚労省官僚が知らないとなると…ハローワークはもっと強力に広報した方がいいでしょうね。
星田淳也 慶應義塾大学出版会 2023年11月20日発行
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