伊東良徳の超乱読読書日記

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調査官の「質問」の意図を読む税務調査リハーサル完全ガイド(第3版)

2023-05-10 00:20:29 | 実用書・ビジネス書
 会社が税務調査を受けた際に調査官の調査に備えてどのような準備をしておくか、それ以前にどのような会計処理をしておくべきかについて解説した本。
 「本書の特徴としては、一般的によくある税務調査の解説本と異なり、第Ⅱ部、第Ⅲ部において税務調査での調査官からの質問を具体的に示し、その質問から税務調査の対応と対策を解説していることです」(初版の「はじめに」)とされ、確かに調査官の質問例が記載され、その際に調査官が知りたいことが箇条書きに挙げられているのですが、その後に書かれているのは結局、勘定科目ごとの税務調査の狙い・ポイントとそれに備えて会計処理と申告でどのようにしておくべきかということです。端的にいえば、調査官にこう聞かれたらこう対応すべきという本ではなくて、調査官からこういう質問をされないように予めこう対処しておこうねという本です。読者の期待としては、このタイトルだともっと税務調査の実情、事例を書き込み、調査の場面でのより具体的なやりとり、対応に踏み込んだ記述が欲しいところです。コラムとして「ブイエス(VS)調査官」という記事が5つだけあって、そこでは具体的なケースでの具体的なやりとりが書かれていて、ここは読み応えがあります。全体について、そこまで具体的なやりとりにしなくても、うまくいかなかったケースも含めて、調査官のより具体的な要求とそれに対する対応、それがうまくいった場合にせようまくいかなかった場合にせよ、少しその原因・理由を考察してもらえると、より読みがいのある本になると思うのですが。
 法人の会計にタッチしていない者としては、法人税、会社の会計処理というのが、実に細々としたところで面倒なものであり、しかも会計原則と税務署の要請のズレとか、とても不合理でムダな事務処理に信じがたいほどの労力が注ぎ込まれているのだなというのが一番の読後感でした。
 2014年から3年間国税審判官として国税不服審判所に勤務していたという執筆者が、「調査官も一定の勉強はしていますが、裁決、裁判例にまで目を通している調査官は決して多くありません」といっている(217ページ)のは、そういうものかと少し驚きました。


あいわ税理士法人編 尾崎真司 中央経済社 2023年3月15日発行(初版は2013年3月15日)
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