4月11日。
いよいよ最後の日になってしまった。
全てのことは、長いようで短いようなものだ。
何も言わないで静かに終わりたい。
と、日記には書いた。内実色々な思いが交錯していた。
叔父の家を発ち、最後の行程を歩き始めた。地元の見慣れた風景であるために、かえって距離が長く感じられた。
瀬見温泉の手前のドライブインで最後の昼食を摂った。日記を読み返しながらこれまでの行程を振り返った。
大変なこともあったが、成し遂げたという充実感が充満し、このまま終わってしまうことが惜しいと思えてきて、なかなか席を立てなかった。
「このままどこかへ行ってしまおうか」
そうもいかないだろうと気を取り直して重い腰を上げた。
松林寺の近くまでたどり着くと、道の両側に村の人たちが立って何かを待っているのが見えた。「何だろう、今日は何かあるのだろうか」と思った。
まさかと思い「何したな?」と聞くと、「何だず、お前ば待っでだんだ」
母には、「誰にも言うな」と口止めしていたのだが、ついつい漏らした一言が広まったのだろう。
「むがさりを待ってるようだった」というような思いで、しばらく立って待っていてくれたようだった。
どうも親戚の一人が斥候となって、車で様子を見に来ていたらしい。
大勢の人が迎えてくれる中、松林寺の山門に到着した。
660㎞、26日間の旅が終わった。
町報の担当者も取材に来ていて、この時の写真が後日山形新聞にも掲載され、大きな話題となった。自分の思いとは違うところで物事は進んでいった。
新庄~松林寺 35㎞。
上山したばかりだったので帰るときのことなどに思いも至らず、偉い人もいるもんだ、位にしか思えなかったのが当時の正直な感想でした。
お寺に対する偏らない見方、この時期にしか受け取れないたくさんのものを、貴師はこの旅の中できちんとものにしていかれたのですね。
やっぱり、すごいことですねえ。