スタンダード版画面、フィルム映画風粒子。時間は90分。映画のちょっと前の基本を地で行く秀作現る、とこんな印象の映画です。
野球があまり得意でなく外野を守るタクヤ。だか彼の顔は喜びに満ちている。空から降る雪をこよなく愛し、顔に当てている。こんなポエムのようなシーンを多様化し、この映画は極端にセリフも少なく、全編詩情にあふれ、淡い印象派絵画のようでもある作り込みです。
人生がそんなに流麗に流れるこ . . . 本文を読む
鬼才ランティモス作品。「哀れなるものたち」が凄かったので、見る前から肩肘立てて見てしまったが、今回は意外やお気楽風で、またオムニバスということもあり、楽しく鑑賞する。
第1章。これがなかなか面白い。3章の中では際立って秀逸だ。カメラワークも整然としていてスタイリッシュ。人間の外側からだけではわからない内面の空虚さを描く。これは気に入った。
第2章。事故であきらめかけていた愛する妻が帰還する。し . . . 本文を読む
題名の意味はラスト近くで分かるようになっている。見ている間は題名の意味も考えず、思わずただ一人の青年の成長をつくねんと見つめている。ただただ両親、祖父母の熱い愛情で育てられた普通の少年。それが変わってしまうのが、、
同級生の素朴な一言だった。そこから彼の二つの世界が始まるのだ。
反抗期という難しい時期とも重なり彼は母親と遠ざかる。そこから結構(原作者には失礼だが)面白くなる。通常のベタな真面目 . . . 本文を読む
黒沢清、本来の現代における不気味で意味不明な狂気というものに久々に挑戦した感があり納得です。快作です。
印刷工場から転売屋へと主業を変える吉井。なるほどアブナイけれど現代的職業ではある。そんな菅田が意図しない狂気の暴力にさらされてゆくその過程、いやあ、面白かった。黒沢監督、初期、中期作品のざわざわする狂気を復活させたかのようだ。
なぜそうなるのか、原因が全く不明のまま、観客が辿る恐怖の過程は、 . . . 本文を読む
意外と素直な少女であることよ。その清らかさ故、、
現実に立ち向かえられなかったのか、と残念至極の気持ちが残滓となる。
まずボスキャラ母鬼の能力・臭気たるや度を過ぎていてホラーを超えている。なぜ少女はこの世に生きていていい存在ではなり得ぬ母鬼を倒せなかったのか?これに尽きる。
精神的属性を担う多々羅の非人間的行為、実際は仕事のために人を利用する桐野の存在も彼女の生き方に影響はあっただろうが、で . . . 本文を読む
現代人においても心にあるものをそのまま言葉にできる人は少ないのではないか。私もその一人だ。昭和という隠れ蓑でそんなものかと無理に思わせていたが、やはり人間は、特に女性は「言ってくれないと全くわからない」らしい。
そんな普通のことが実際はどんどん悲劇と連鎖してゆく様を見て、呆然とする。ラストは号泣。大賀はまさにそこに私が存在するかのような演技で、映画愛さえ感じてしまうほど。 . . . 本文を読む
題名の十字架を象徴する真面目作。O・ブルームが自分の演技力に新たな挑戦を試みた問題作ともいえる。
題名の通り、十字架が基本テーマです。信仰とは何か、人間と信仰との距離、関わり合い、生きることと信仰すること、それらを寓話のような事件から解きほどこそうとしているように思えます。
ブルームが最後にたどり着いた罪人を赦すということ、それはすなわち赦された方は神との対峙をせざるを得なくなることを意味する . . . 本文を読む
韓流の流れをくむ本格的ハートフル恋愛映画です。隣の部屋との壁越しの愛だから、もちろん純愛です。この手の映画はもはや韓国でないと作れないのではないか、と思われるほど素敵だ。映像を見てるだけで即感情移入ができるのだ。
日本映画だったら、こうはいかない。嘘っぽくなり、見られない。そういう純粋で不思議なものを韓流は持っている。でも、昔はこういう韓流を見、感動し、涙した吾輩も、そうはならない。もう心も枯れ . . . 本文を読む
心の内側に流れる澱んでいるけれども、かすかにたなびくその響き、、。誰もが抱える心の襞を包み隠さず現代人に投げかけた問題作だと思います。
友人であれ、親子であれ、夫婦もしくは恋人たちであれ、本当のことは言えないものなのです。言葉に出たそれが嘘かどうかは明確ではないけれども、、、。
誰にもある密やかに流れる心のうごめきを映像化した繊細な秀作だと思いますこの作品、冒頭の2,3分でぐいぐい画面に入り込 . . . 本文を読む
北朝鮮とのスリリングな闘いをエンタメ風に何でもあり風にやってのけたイ・ジョンジェ監督作品です。こんなのを作ってみたかったんだろうなあ、アクション部分も水準なのでどうなるかわからない展開も面白く2時間とても楽しく見られました。ラストもなかなか冴えてます。 . . . 本文を読む
阿部公房の50年前ほどの名作の映画化。知ってはいたが、未読の作品だ。意外と前衛とか実験とか形而上学的とかそんな表現はこの映画にはそぐわない。
現代に生きている我々は箱男の心情はわかる気もするから、それほど難しい映画だとは思わなかった。ストーリーを探ろうとすると阿部公房の迷宮にはまりそうなので、なるべく距離を置いて客観的に映像を眺めることにした。
とすると、1人の男の人格分散のような気もするし、 . . . 本文を読む
終戦記念日にこの映画を見る。たまたま偶然だ。けれどとても思い入れが入ってくるいい映画だった。
戦後79年。もう戦争を覚えている人はかなり少ない。いやな思いをしてきた人達も戦争を話さない。ましてや戦争にかかわった人たちは尚更だろう。どんどん日本人の記憶から戦争といった実態が薄まり、遠のいてゆく。
そういう意味で、こういう映画を若い人たちが見ることは、どういう形でさえ有意義だと思う。特攻隊員の様々 . . . 本文を読む
イタリアのホラーでもサスペンスでもない普通の映画です。人の人生がふとしたことでどんどん変容していくドラマですが、意外と見られるので退屈はしない。俳優陣も美しくさすがイタリア映画ですぞ。クローズアップ多様でそれでうまく逃げてる感じもするが、悪くはない。カロリーナ・サーラが昔のジーン・セバーグ風で記憶にとどめる。
. . . 本文を読む
韓国を代表する二人の俳優がタッグマッチということで楽しく観戦したが、彼らにしてもどうもこの演出では本来の目指すところまでにはいきつかずのあり。とても面白い設定だけに残念ともいえる。スピード感不足は否めず。ただ、二人を楽しく見るという視点であればそれなりに、、。、 . . . 本文を読む
なんと珍しいモンゴル映画。かといって、大平原なんて出てきません。モンゴルでもここまで文明開化したかと戸惑うほどの都会風景が点在する。よくある国柄の文化解説表現もありません。ゆったりとした演出・映像に運転されたある女性の成長話です。モンゴル国の余裕さえ感じる楽しい映画です。 . . . 本文を読む