家庭教師のアルバイトをしたことがある。
教えたのは、鹿児島で少し名の知れた飲食店を経営している家庭の、小学生の男の子だった。
自宅は、22歳くらいのお手伝いさんが住み込んでいる、鹿児島では上流家庭といっていい家だった。
男の子は、4年生にして早くも算数でつまづいており、はっきり言ってあまり出来のいい子ではなかった。
だからこそ家庭教師を頼んだのであろうが・・・
中学2年の兄と高校3年の姉がいたが、姉のほうが
「ここ、教えて」
と言ってくることがあり、時々彼女にも教えた。
体をくっつけるようにして一緒に机に向かい、勉強を教えるときは、少しどきどきした。
ちなみに、姉は東京の有名お嬢様大学へ進学した。
その後何十年かして、テレビで「鹿児島のおいしい店」を紹介する番組があり、その店が紹介された。
年老いたお父さんと若旦那が映された。
若旦那は、長男ではなく私が教えた次男のほうだった。
私は、立派に店を継いでいる次男の姿を見て
「あの出来の悪かった子が・・・」
と感慨深いものがあった。