昨年の春、隣の集落のシイタケ農家からいただいたほだ木にシイタケ菌を打ち込んであった。そこに、今年の秋シイタケの赤ちゃんがポコポコ育ってきた。1年未満でシイタケができるのは想定外だった。
そのうちに、この地域で言う「タンコロ」という直径40cmくらいの根元に最も近いコナラのほだ木にも、しっかりうまそうなシイタケができていた。汗だくでこの重いほだ木を運んでくれたシイタケ農家の心意気に頭が下がる。
さっそく、和宮様直伝の手料理を賞味することになった。ひと口食べるごとに、「旨いー」の連発だった。市販の薄っぺらな菌床シイタケは問題外。肉厚の原木シイタケの旨みと食感が口内を輻射させる。
むかしは、原木にナタで傷つけ菌が付着するのを待って、自然にできるのを待っていたという。それが、昭和17年頃、森産業が「種駒」を発明してから急速に広まっていく。戦後、昭和45年ごろから菌床栽培が始まってそれが今、生産の8~9割を占める。
急峻な山から原木を伐りだす肉体労働の厳しさと旨みを考えると、原木シイタケはもっと高値になってもいいと思わざるを得ない。したがって、シイタケの販売は菌床か原木かの表示を明確にしてもらいたいものだ。そのことで、山に生きる労働の評価を高めてほしいと痛感する。