和宮様の勅命が出された。「グラジオラスが倒れないようにせよ」とのことだった。毎年、風の勢いでグラジオラスの茎が折れたり倒れてしまうことがあったからだ。まずはその周りの雑草の草取りから始まる。周りには花の苗もあるので草刈機は使えない。手作業で一本一本抜いていくしかない。これだけで一日が終わってしまった。翌日になって支柱をめぐらしたが手持ちの支柱のほとんどを使いきってしまったので、「アカザ」の硬い茎も急遽代用とする。
グラジオラス(アヤメ科)の原産は南アフリカだった。18世紀半ば、東インド会社がヨーロッパに持ち込んで以来普及し改良がおこなわれる。いかにもヨーロッパ人が好きそうな花だ。それが次にドイツ経由でアメリカにも伝わり、19世紀末にはカリフォルニアがその生産の中心になっていく。
日本には幕末に伝わり、「唐 菖蒲」とか「オランダあやめ」の名前で栽培されるが普及せず、明治にはいってからやっと出回っていく。グラジオラスが東インド会社とつながっているとは驚きだ。大航海時代と現代のグローバル化とは共通点も多いが、人間の欲と格差拡大だけはとどまることを知らない。そしてしばらく、勅命なので草取りと柵づくりは引き続き手を抜くことはできそうもない。これからボチボチ花が断続的に咲いていくことになる。