ときどき通る国道なのに、立派な半鐘を初めて発見した。いわゆる梵鐘の小型版である。半鐘とはいえ、立派な梵鐘なのに感心する。国道から手が届くそばにありながら盗まれないのが不思議なくらいだ。金属価格が上昇した2006年ごろには半鐘も含めて金属の盗難が相次いでいたというのに。それだけ、穏やかな地域でもあるという証左でもある。
その半鐘の形式は梵鐘とほぼ同じようなデザインでもあった(図版は越前小田文化歴史館のwebから)。「乳」もあるし、「撞座」も確認できる。ひょっとすると、お寺で使用していたものかもしれない。半鐘にはそれぞれの地域で工夫して提供しているのがわかる。この半鐘に匹敵するよう「双盤」という銅製の立派な楽器を利用している地域もいくつか見たことがある。こちらも手が届く所にあって、盗まれないのが不思議なくらいのしろものでもある。 https://blog.goo.ne.jp/takebei6491/d/20190609
近隣の地区でよく見られたのは「中山式半鐘」だ。1990年代前後に広く売れた鉄製の半鐘と思われる。https://blog.goo.ne.jp/takebei6491/d/20140913
戦時下では半鐘も供出された対象だった。したがって、現在まで生き残った半鐘もあれば、供出してしまった代わりの半鐘もあるというわけだ。その懐かしい姿には涙ぐましい歴史が刻印されているということに違いない。いまや、半鐘を鳴らすという行為はめったに見られないが、鳴らさないでいられる平和・安全を大切に思う気持ちを忘れてはならない、と思うばかりだ。