近隣の農家から電話があった。「茶畑の近くに今まで見たことがないような植物があったんだけど。孫が調べたら<松葉蘭>というシダらしい。サンゴのような形でけっこう珍しいみたいだよ」という内容だった。さっそく、現地に見に出かけた。『シダ図鑑』のいちばん最初のページに似た写真が出ていた。それは、「一目一科一属一種」しかない特殊な菌根共生腐生植物「マツバラン」だった。つまり、他に似た例のない一つしかない植物だということだ。松葉に似ているが蘭ではなく「シダ」植物だった。
これは、18世紀後半、天明年間の江戸時代には大名らの愛玩植物としてブームになったという。『松葉蘭譜』という書籍が出版されたほどだ。120種類以上のマツバランの品種が栽培されていたらしい。現在は環境省のレッドデータで「準絶滅危惧種」に指定されるほどの希少植物となっている。
茎だけで光合成をして胞子をつくるが、葉も根もない。地下茎の仮根で菌類と共生しているという。どこからか胞子が飛んできて雑木林周辺の落葉に居場所を見つけたらしい。オークションの平均価格は9千円ということらしい。そっとしておきましょう。電話をくれた農家さんにも久しぶりに会えることもできた。ありがたい。いつものつながりには深ーく感謝。