雑草の海のバタフライガーデンで、いま唯一花盛りなのは、萩の花だ。雑草に埋もれて命を落とした草木も多かったのに、萩だけは安心して成長をしてくれた。やせ地や裸地においてパイオニア植物として戦陣に馳せ参じる樹木である。茶畑の跡地に植えつけてすぐ反応が良かったのが「萩」だった。
萩がなぜ古代人の人気になったかについて、万葉の歌人には「大和盆地」に縁のある歌人が多かったからという説がある。つまり、大和盆地の森林伐採・焼き畑農業による開発で、パイオニア植物の萩がよく見られたからだという。萩を育ててみてなるほどと思う。
万葉集に詠まれた花を多い順に示すと次の通り。断然、ハギがトップなのだ。
1位 ハギ 141首 2位 ウメ 118首 3位 松 79首 4位 橘 68首
5位 桜 50首 6位 葦 50 7位 ススキ 47首 (数字は引用者によって微妙に異なる)
なぜ、萩が慕われていたのか、それは、萩の原文が「芽子」と表現され、「めこ」は「妻子」、女性を表現する象徴として扱われたというのだ。それに対し、「鹿」は男性を表し、萩と鹿がセットで相聞歌となっている歌が圧倒的に多い、という。
そこに、秋風・露・月・雁などの定番を登場させ、秋の風情と愛の切なさを交錯させている。したがって、花言葉も「内気」とか「思案」とかの控えめな風情を醸し出している。そこから、「秋の花見は萩だ」と古代人は謳うわけだ。わがガーデンの10mを越える萩の花の行列を見ると、なるほど秋の花見は秋だというのを実感する。