私の住む苅田町、朝の気温は、氷点下2度とのこと。
農園に遊びに行こうかと昨晩考えたが、坂道で自転車が凍ったアスファルトにスリップしそうで、今日は一日炬燵の人。
暇なので、私が小学生の時、父母が4人の子供達にと大枚はたいて買ってくれた、講談社の「少年少女世界文学全集」の世界童謡集というのを読んでみました。
この全集は、人気があり、親が買ってくれたという、同世代の友達も多い。
今治で商売をしていた父母が高齢で店を閉めた時、私が貰ったもの。
その後、私の子供達3人が読み、今は、私が読み返して、読み終わったものは、長男、長女宅に送っている。
孫が読めばいいと。
この世界童謡集の発行は昭和37年、私が13歳の時で、童謡とか詩などには興味なく、手元に届いたまま、一度も読んだことが無かった。
いい詩が沢山。
今日読んだ詩で、感心したのが、ドイツの詩人、小説家、ジャーナリストのケストナーの詩。
「誰も君の頭の中をのぞきはしない ケストナー
君がどんなに富んでいるか、だれも知らない・・・。
ぼくがここで富のことをいっても、
ぼくのいうのは、もちろん株券や
別荘の車やピアノや
その他の高価なもののことではない。
人が目で見て税金をかけるような
富を、ぼくはいますすめようとは思わない
根を引き抜いてみてさえも
誰にも数えることが出来ないような価値があるのもだ。
その価値は、泥棒だってぬすむことができない。
忍耐はそのような一つの宝だ。
あるいはユーモアやしんせつや
そのほかすべての感情も。
じっさい、胸の中にはたっぷり場所がある。
それはまるで魔法の袋のようなものだ。
感情がどんな富をやくそくするものかを
忘れている人だけが、まずしいのだ。
だれもきみの頭の中をのぞきはしない。
君がどんなに富んでいるか、だれも知らない・・・。
(そして君自身もそれを知らないことがよくあるのだ。)
訳 柴田治三郎 」
ケストナーは、今日、百科事典を見て初めて知ったのだが、1899~1974の人で、ナチスドイツの1933年の焚書で著書を焼かれたり、2度投獄された経験。国外に出ず、ドイツで生き、戦後も西ドイツのペンクラブ会長として活動。という人物。
この詩を読んでいて、この正月に立て続けに起こった、能登の地震と、羽田の日航機事故を特集したテレビ番組を思い出した。
事故の2w後に、民放で放映されたもので、タモリ氏が地質学者、もとパイロット、元CAと映像を見ながら、意見交換するもので、大変印象に残っている。
特に羽田の事故で、乗客・乗員379名が全員脱出出来た奇跡の報道には驚かされた。
第一報のニュース映像で、火だるまの旅客機が滑走路を走っているのを見て、これは乗客・乗員は全滅と私は一瞬固まったのだが、直後に全員脱出と報道が続き、まさかと思った事故。
後部座席にいた乗客が、今後の事故対応に役立つだろうと、半分死を覚悟して、スマホで動画を撮っていて、それが紹介されていた。
海上保安庁機との衝突から4分後から撮影が始まり、脱出して外に出る6分間が音声も含めて紹介されている。
乗客は、CAの指示を守り、煙が充満してくる機内で、座席で待機。
立ち上がって勝手に逃げる人皆無。
マイクが働かず、CAが前方で指示する内容を、乗客が、後方にリレーで伝言。
8つある脱出シートのうち、使えるシートは前の2つで、まず前方の客から、続いて後方の客が、素早く、荷物は上部の棚においたまま、手ぶら(携帯と財布は皆さん持って逃げた)で脱出シュートから機外に。
その間、CAは外が火の海で使えない脱出口を客が勝手に開けないように、担当の出口を見張りに残る。
外に出た客の一部は、滑り降りてくる客が下で団子にならないように、手助け。
一番後部の脱出シュートは、火は回っていなかったが機体が前のめりになり、高さがあり、使えるが確認に時間がかかったが、担当のCAの判断で開放、映像で見ると、ここからも10名以上の乗客が脱出。
撮影をした人が脱出したのは、衝突から10分後で、この方は、後部座席にいたので、大半の乗客は、10分で脱出、最後に出たのが機長で、18分後で、多分機長は取り残された乗客がいないか、残り8分間、命がけで確認したものと推測。
事故にあったのは、JALだが、ライバルのANAの地上勤務員も30名がかけつけ、逃げ出せた乗客の誘導や、小型機を近くにつけて、電源を入れて、トイレを使えるようにした。
乗客のインタビューもあり、ある子ども連れの男性が、「こどもの隣に座っていた方が素晴らしい方で、子どもさんから先に逃がしてください」と。
ケストナーの詩にある、一番の宝物の、忍耐、思いやり、勇気、知性といったものが、この日航機の事故脱出には溢れているように思いました。
日本は、GDP世界第二位を長く誇っていたが、中国に抜かれ、昨年はドイツに抜かれ、まもなくインドにも抜かれそうな気配。
人口が減っているのだから、この趨勢は止められない。
GDPでは、もう世界3位までの表彰台には立てないが、ケストナーのいう、どろぼうも盗むことが出来ない、忍耐、ユーモア、親切といった財産は、日本には豊かで、これを維持、増やしていくのが、今の日本には大事と思ったことでした。
これなら、老いて病んで貧乏している、私達爺さん、婆さんにも今からでも十分に出来る。