本当に久しぶりに藤沢周平の時代劇を読んだ。
「橋ものがたり」という10作の珠玉の短編集だ。
藤沢周平にとっても、連作の短編集というのは、この作品集が
初めてで、かつ、いわゆる市井の作品の型を作ったともいえる
ものらしい。
図書館から借りてきた本書は、愛蔵版と書いてあるだけに、
巻末に、自筆原稿の写真集や、江戸絵図めぐりとして、
江戸古地図に現在の地名を追記したものがカラーで載っていた。
思わず、カラーコピーしてしまった。
さて、10編の作品は、それぞれに味わいがある。
「小ぬか雨」という作品は、吉永小百合の主演でドラマ化された
こともあるらしい。ちょっと、落語の話を想起させる筋立てだ。
「小さな橋で」と、最後の「川霧」が、自分としては、気に入った。
「川霧」では、惚れた訳あり女と所帯をもって3年、突然、いなくなった
あとを追って、探し回る。追ってはいけない相手と、あきらめて、
出会った橋に行くと、そこで、また、再開できるというものだ。
いろいろな時代劇の中で、この市井を描いた作品は貴重だ。
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