義足つけ空き缶前に復員者アコーディオンの軍歌は寂し
白衣着て家々渡る門付けの戦闘帽に違和感強し
家々を一本脚に下駄はいて傷痍軍人ハーモニカ吹く
越後御前唄う声音の心地よさ米を投げ入る留守居の我は
死亡記事最後の御前は長寿なり我が家門付け我は聞いたか
肩に手を御前三人は通り過ぐ押さえた三味線手甲緋色
義足つけ空き缶前に復員者アコーディオンの軍歌は寂し
白衣着て家々渡る門付けの戦闘帽に違和感強し
家々を一本脚に下駄はいて傷痍軍人ハーモニカ吹く
越後御前唄う声音の心地よさ米を投げ入る留守居の我は
死亡記事最後の御前は長寿なり我が家門付け我は聞いたか
肩に手を御前三人は通り過ぐ押さえた三味線手甲緋色
早朝四時過ぎ、未明のまだ薄暗い時間に、遠くでヒグラシの鳴く声が聞こえた。
7月2日にアキレス腱断裂してから蟄居状態だからセミの声の「初聞き」である。窓から見える山百合の花は台風で散ってしまったが、その下の葉裏に空蝉が見える。
例年だと、庭にはクマゼミとニイニイゼミの抜け殻を見出せるのだが、今年は一個だけである。そういえば周囲でクマゼミもアブラゼミも鳴き声を出していないのだ。
二番子を巣立ちさせていたツバメも今年は一番子のみで、早朝白み始めた頃からのさえずりは聞かれなくなって久しい。家が立ち並んで採餌する環境が減少したのが原因だろうが、蟄居状態の身には、なんとも寂しい限りの朝なのである。ギプスの中は空蝉のように空っぽに想えて、自身も「鬱背身」状態だ。