当初の目論見には整えられたけれど護岸丸太として並べたのは腐食が進んだ材なのだった。それでも径が大きいので中心部だけに見当をつけても十分な使用条件はある。苦労して据えた丸太材だけれども、ここにきて「やれやれ目星がついた…」と思える時期になるとぞろ浮気の虫が蠢きだした。「もう少しましな材を据えよう!」てなもんや三度笠は何時もの手太楽で、この日は年度末総会に出席要請が出てしまったのでその時間を見込むと作業時間が小一時間も少なくなる。仕方が無いとあきらめ用材の伐採だけ済ます事にした。使えたかった用材は立枯れたままの二本で木筋もよく腐食も進んではいない。現場につく前から「あの二本」と決めていたのに立ち会ってみると意外に太く胸高直径60cm、樹高20m以上の大径木だ。伐倒するに河原に倒すので支障木はないものの、やはり太すぎて長尺では移動が不可能、結果として使いない部分が半分以上の見通しとなったので急遽、細めの傾斜木や沢に倒れ込み土砂ダムを形成している倒木の中から使えるのを選ぶことにしたのだ。
➡ まずは段差工を施した場所の至近距離にある立ち枯れ木、幹元は50cmはあるが中折れしており高さは10mほどである。「近いから据えやすい!」と選んだ1本だけれど河床に倒れた姿は「太い!太すぎて移動できない…」が第一印象である、先端部の裂けた部分を切り離して7m材を採りたいのだが500kg用の牽引器では無理かも知れない。
➡ ➡ そこで適正径と思えた河原の斜行木を使う事にして伐採する。斜め木は既に重心が外側で倒す方向は選べず、不用意に切削開始すると撥ねて裂ける場合もあるので気を使ったものの無理なく地上に倒せたのだった。ところが反対側の斜面に届いて弓なりになってしまった。どちらにしても先端部は不要なので8mの用材とするべくチェーンソーで切断を開始したのだが内部応力の見込みが誤っていた。通常のこのようなケースは丸太の上部は圧縮力があり下半分は引っ張り力があると判断する。小生も当たり前のようにそのつもりで対応したのだが「弓なりになっていたのは木の自重のせいで、その中に元に戻ろうとする復元力も内在していた」結果、下側から切り離すべく刃を進めていたらしなりからの復元がありガイドバーもろとも狭間れてしまった。さーて、こうなるとにっちもさっちもウンコもいかない。手鋸が無いと外せないので林道終点まで戻り手鋸を持ってくる羽目になった。で、2本目落着。
➡ ➡ 3本目、河床に押し出され流木ダムとなった中から素性の良い1本を選んだ。樹皮は無くなっているものの幹本体の腐食は進んでいない硬質の材である。恐らくヒノキなのだろうが折り重なり合い土砂が覆っている部分を外しても6mほどを取り出せる。これも護岸材として活用すべく切断する。写真では見えないが中央から先端部は半分が土砂の圧力で孕んでいる結果、これも不用意に切断すると跳ね返りで大怪我をする事になりかねない。そこで弓なり著しい中央部から鋸目を入れつつ応力を逃がしながらまずは片側を切断する。これで反発しないから幹元を切断するのは上下の応力の違いを計算に入れるだけだと作業開始したのだが、ここも思わぬ伏兵が居てまたもや挟まれてしまった。先端部の弓なり部分は切断したのだが押し出して来た土砂を排除した訳でも無いので押し出し圧が残っていた。その結果、またもやチェーンソーが挟まれてしまった。
一難去ってまた一難であって、女難去ってまた女難ならもろ手をあげ歓迎する孤爺なれど姥捨て山では女子衆や花魁はおらんのであった。そんなわけでイジイジと幹に掛かる土砂を棒で掻きだしながら応力を減じたのだった。由ってようやく危機脱出する。後は牽引器で河床を引き下ろすだけなのだがこの日は時間が無く総会のために早めの撤退だ。総会に顔出しするだけの手間より作業続行の方がなんぼか保全に役立つと思うのだが浮世の義理や付き合いを全てスルーする訳にもいかない。かくして残りは明日以降だ。