木を愛し、土に親しみ、犬と戯れ、思いつくまま気ままに発信、知る人ぞ知る「山章工房」のブログです。
山章工房の木土愛楽(きどあいらく)




今日の天気はまさにげんこつハンバーグの「さわやか」そのもの。
(静岡県遠州地方にしか分からないネタです。)
相変わらず体調も良く、朝のランニングでは実に数ヶ月ぶりに
60分を切ることができました。

さて、写真は仕上げのかんなくずです。
木工をやる人は誰でもこのかんなくずが好きです。
このかんなくずの薄さに一喜一憂します。
もちろん私もそうです。
でも、私のかんなくずは今の力量ではこの程度です。
自分の非力を棚に上げていうのは気が引けるのですが、
数年前間から疑問に思っていたことがあります。
それは「削ろう会」という競技会です。
一度も参加も見学もしたことがないのに
書いているので大きな誤解があるかも知れません。
「削ろう会」は木工を趣味としている人の多くはその存在を知っています。
4~5年前のNHKの「人間ドキュメント」でも取り上げられたので、
木工に関係ない方にも一時的には全国に知られたのではないでしょうか?
カンナでどれだけ薄い削りかすを出せるかを競う競技会を
ほぼ半年周期で日本各地を回り開催しています。
2~3年前には県内の御殿場市でも開催されたので
見学に行きたいなとは思っていたのですが、
ちょうど山荘の改築で忙しい時期だったので行きそびれました。
数ミクロンの薄いかんなくずを出せる技術は尊敬します。
もちろん私もそうなりたいと思います。
しかし、かんなくずは所詮、作品の仕上げの際にでる「くず」です。
それで技量ははっきりします。
薄いかんなくずを出せる人が上手いに決まっています。
でも、評価するのは、あるいは本人が目指すべきなのは
そのカンナ作業の結果できる作品の出来ではないでしょうか?
NHKのドキュメントに出ていた人は、研ぎに8時間かけるそうです。
その大工さんとしての仕事も確かで、家造りにかかわる
後に入るクロス張り職人などやりやすさも思いやるていねいさです。
ところがこの職人さんがカンナを研いでいる自宅は、
いわゆる新建材を使った今風の住宅で、
残念ながら数ミクロンを削り出す技術を活かした
柱などはテレビで見る限りでは見ることができませんでした。
カンナを使う伝統技術が消えることを危惧して
多分「削ろう会」の活動はスタートしたものと思われます。
しかし、その技術が現場に活かされないのなら
それは単に国宝級の「無形文化財」の領域に入り、
一般の住宅や家具作りには反映されないものに
なってしまうのではないでしょうか?
また、研ぎに数時間かけることや、
1丁数十万円するカンナや砥石を
使ったとしたらそれは作業コストに組み込むことができるのでしょうか?
コストダウンを得意とする大手メーカーに対する勝算はあるのでしょうか?
そんなことをいろいろ考えると
「削ろう会」は木工の現場とは離れた
一種の趣味の競技会と考えた方が私には腑に落ちるのです。
繰り返しますが、木工をやる者にとって
カンナはとても大切でおもしろい道具です。
しかし、カンナだけでは家も家具もできません。
やはり、設計や他の造作や仕上げなどの作業と
時間的にもコスト的にもバランスのとれたもであるべきだと
未熟者の私は思うのです。

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