6月、花菖蒲が見ごろを迎えるころ、長年勤めた大手製紙会社「岩国工場定年退職者の会」というOB会が行われる。
定年退職する際に入会希望者を募るという、個人の意思による自由加入方式になっている。
我々が定年を迎えたころには、入会希望者がほとんどで、断る人はまれなくらいの少数派であった。
ここ数年、会への入会希望者が少なくなっているという。
昭和30年代から平成に移る頃、まさに高度成長期を「この手で支えてきた・・・」という自負にあふれた集団であった我々世代。
完全終身雇用という安穏な時代でもあったが、競争社会であることに間違いなかったし、お互いの闘争心も旺盛であったように思う。
戦後復興の名残や、所得倍増論、列島改造論など、著しい経済成長の中で華やかな会社生活を送らせてもらった。
ところが経済成長の停滞に合わせて、工場で働く仲間の待遇もかなり変化してきた。
完全終身雇用の一角が崩れ、職場配転、退職勧告など日常茶飯事という落ち着かない会社生活を強いられる今の人たち。
そんな後で「定年退職者の会へ」と誘われても、二の足を踏む考えが理解できないわけではない。
しかしそうはいっても、長年の家族の生活や進学・成長など、あらゆる経済活動を支えてくれたのは会社である。などというと反論があるだろうね~。
目下登録会員が400人。年間3回組まれる大きな行事、中でも、桜満開の時季に開かれる春の大花見の「歩こう会」。
6月の総会と懇親会、この二大行事には150~170人が集まる盛大な会となる。が、ここでも欠席者の数の方が多いのも確か。
入会から丸13年が過ぎ、14回目の参加であった今年も、まだまだ先輩の方が多いという現実。
ちょっと訳ありな先輩。気の合った同輩、ちょっと厳しく当たったかなと思わせる後輩。それぞれの顔が集まる。
「そんな会のどこが面白いの?」と言っていた人が、一度出席たら完全にはまってしまって、来年の出席のために洋服を買ったら、一年間で肥ってしまって着られなくなったから、また新しいのを買った、というご仁もいる。
「あの人があんなに元気なのだから、俺なんかが年取っていられよう」という元気な大先輩も。
顔を見るだけで、何となく甘酸っぱい青春を思い出す女性の顔もある、という人もいるような。誰とは言わないが・・・。
そこで思うのは、人との付き合いが億劫になった・・・と感じ始めるときが、老け込む始まり、つまり「年寄の始まり」ではまかろうか。
他人事ではない。自分自身がそう思うのである。そこここで、人に接するのに躊躇する感覚が生まれ始めた。これってやばいかも・・・。