今年も収穫の時が来た。
クルマで走ること50分の山の中。高齢の義兄夫婦に変わって、手入れをし、守り育てている梅の木3本。
今年は当たり年だったようで、紀州和歌山の白梅から獲れる「南高梅」に負けていない、大粒の良い梅がもぶれついた。
梅雨の晴れ間を狙って、というか、この日ばかりは「梅もぎ」以外の予定を組まず、梅もぎ専門に当てた。それがたまたま朝から絶好の梅もぎ日和となったということ。幸いなことに、下草も刈って間がないので草刈り機を使うほどでもなく、到着するとすぐに梅もぎに精を出せた。
それに、中学生になったカー君を、強力な助っ人としてチャーターし、3人で出かけた。
文字通り「たわわ」(墝 たわむほどに生る)に生った実を、一つずつ丁寧にもぎとっていく。
「これでまた、毎朝の梅干しに事欠く心配はない」「自家製梅酒の晩酌が楽しめる」「パンにつけて食べる梅ジャムも絶品」などと、自らの手は出さないが、いつの間にか出来上がっている保存食品に思いを巡らし、背伸びしたりしゃがんだりして汗を流すこと1時間半。思いのほか上出来の収穫。
「じいちゃん、毛虫がいっぱいおるよ」。毛虫に弱いジジを心配するカー君の声が聞こえる。
「大丈夫よ、長そで着ているから・・・」。かつてはネクタイ占めてどこにでも出向いた真白いカッターシャツ。今では現役を終え、もっぱら畑仕事の定番コスチュームとなっている使い古しのカッターシャツ。
この、長そでだから大丈夫、という安心感が命取り・・・。
汗でびっしょり濡れたカッターシャツは、肌にべったりくっついて、どうかすると皮膚露出と大きく変わらない状態であったことに後で気づいた。
毛虫にとってもかっこうの標的となったのだろうか。
作業が終わって「なんかしら身体のあっちこちがムズムズするな~」といち早くシャワーのご馳走にあずかった。
時すでに遅し。面の皮と正比例なのか反比例なのか、とにかく体全体がむずかゆくなった。
一晩おいた翌朝、体中に真っ赤な斑点が、飛び飛びだったり折り重なっていたり。オー痒い!!
馴染みの皮膚科も土日とあって休診。取り敢えず市販の虫刺され薬で一時をしのいだ。
それでも外せない予約や予定を抱えていて、それだけは出向かないわけにはいかない。痒みも痛みも我慢して、なんとか顔をつないだ。
明日こそ朝一番に皮膚科に・・・と思いきや午前中はこれまたこなさなきゃならないノルマがひとつ。
たわわに実った梅の実で、おいしい保存食が頂けると思ったら、この大事な五体を毛虫のヤツに先に頂かれてしまった。
一緒に汗を流したカー君も山の神も、ケロッとして何事もないというのに、ジジのお粗末な造りのこの繊細な肌だけが毛虫の標的となったのか。
やはり面の皮と同じで、薄~~い・柔らか~い・傷つきやすい体質であることを、時分でも不思議に思う。