春の七草「なずな」(ペンペン草)
昨日は「七草がゆ」を食べて、正月以来の飽食を慎み、酷使した胃腸を休める日。当然、お酒も控えめにせよということなのだろう。
昔の人の知恵の深さを改めて思い知り、理にかなっているな~と感心することしきり。
「よく見れば なずな花咲く 垣根かな」(芭蕉) とあるように、古くから人々に親しまれてきた野草「なずな」。
ところが今では「七草が生えているよな場所が無い」が現実である。
そうは言いつつも、「なずな」や「仏の座」と言われる野草は身の回りにいっぱい生えている。しかもそれらは、すずな(蕪)すずしろ(大根)を畑で育てるときの大敵である。ちょっと油断すると、これら野草の方がはるかに伸びて、本命の成長を脅かす。
しかも「なずな」は、ペンペン草と呼ばれ、この草がはびこる家は没落すると、忌み嫌われてきた草でもある。
「あの家はペンペン草が生えている」とか「あの家にはペンペン草も生えないほど貧乏だ」というふうに使われてきた。
昔から春の七草にうたわれたほどの人気も、時代の変遷とともに価値観が変わってくる。ある意味恐ろしいことである。
里帰りする子や孫においしいものを食べさせようと張り切って、確かに贅沢を構える。ついつい肉食系の美食に走る。
しかし、よくよく考えてみれば、若い者親子は食生活も割と時間をかけずに、手っ取り早い食材で済ませる傾向にある。ついつい手間暇かけない美味しい料理、つまり肉食系になる。そういう彼らに限って、七草がゆなど食べないだろう。
となれば、本当の里帰りおもてなし料理とは、普段多く食べない野菜たっぷり草食系を心がけるべきではないかな。
などと立派げなことを言ってはみるが、しょせん手を下すのは誰あろう山の神である。吾輩は出された食材を「うまいね~」とひたすら食する専門員である。七草がゆはやっぱりうまい。体にもいいような気にさせられる。