(腰が曲がったスベルべママママには少しきつかった)
(かすかに見えるユキワリ草)
(暖かな顔を見せる日本海)
「ユキワリ草」
妻の友人であり、私と同じ山岳クラブに所属する女性から、山行を誘われた。
いまならきっとその山はユキワリソウの花盛りだと言う。
雪の中の生活から抜け出したい気持ちも強く、誘われたままに行く事に決めた。
我が家からは遠くもないので、雪の中の生活に退屈している事では同じであろう妻の八十二歳の母も誘った。
四月のある日曜日の事である。
山のふもとから少し登った駐車場に着くと、満車状態。近隣のナンバーが多く、
雪国の長い冬の生活から抜け出したい人々は多いようだ。空きを見つけて車を止め、早速足拵えをする。
大きな案内図を見て、妻の母に無難な高低差の少ないコースを歩くことにした。
ハイキングコースに近いとは言え、やはり日本海に臨むその山はそれでも起伏が多い。
歩き始めて間もなく、木陰にユキワリソウの可憐な姿を見つけた。
幾度と無く沢沿いに下ったり、尾根を登ったりを繰り返した。すると、次々に群生が目の前に現れた。
驚くばかりに自然の姿が残されている。
しかし、それは何も人の手を加えずに残っていたのでない事は当然のことだ。
地元の人達が中心になり、道路を整備し、盗掘に対する見回りをしたりして守り、増やした努力の結果だと言う。
頂上に着き、見下ろす日本海は春の太陽を小波に照り返しのどかに揺れている。
しかし、春霞のためか佐渡を見る事は適わなかった。
気が付くと頂上直下の斜面の一角は、カタクリの花が満開だった。
山菜取りで足腰を鍛えた義母もさすがに疲れたようだ。
腰がかなり曲がってしまった義母は下りが辛いのだと言う。
ゆっくり休み、周回の下山コースをたどった。途中では珍しい「コシノカンアオイ」の花も見られた。
最後は有名な寺「国上寺」に着いた。近くには良寛様の終の棲家「五合庵」もある。
冬篭り状態から脱するには義母にはともかく、私たちには程よい気持ちの良いハイキングだった。
ちなみにお寺は「こくじょうじ」。その山は国上山と書くが「くがみやま」である。
(連載アップを飛ばしちゃいました)