カールベンクスさん(その2終わり)
この綺麗な農村風景が一種のだまし絵で、窓、そして風景が全部絵画だったのだ。その絵を描いたのが、美術を学んでいた、「星奈緒」さんだ。それが縁で個展の会場として使うことになったのだとか。
旧東ドイツ出身であること、そして日本家屋の魅力に取りつかれ、古い民家の再生を手掛けていることなどが話題になり、名刺交換をして話を終えたのだった。
そんな縁の彼、カールベングスさんである。遠くドイツの地から松之山地域に移住した理由、家庭、奥さんの有無なども気になったが聞けずじまいでお別れした。
その、カールベングスさんの番組である。前回お会いした時からの歳月の流れを感じさせられる容姿になっておられた。そして、素敵な奥さんとの出演。どうして彼がこの地を終の棲家として選んだのか、そして奥さんも不自由な暮らしを受け入れられたのか、番組で自然な流れでストーリー風に語られる。
奥さんは唐突に、新潟に住むと言われ、成田から自動車で案内されて山の中、坂道を進むうちに不安も感じられたという。しかし、定住しようという地域に到着し、6月末の風景を見ると、一回で好きになり、ご自分も暮らそうと思ったと語られる。
わずかな土地を耕し、そこで採れる野菜を主として食べる暮らし。疲れたベンクスさんが休んでも、一時間ほども表で椅子に座って風景を見て過ごすという。都会の雑踏とかけ離れた静かなたたずまい。人の行く末、幸せな終生とは何かを考えさせられた。
(終わり)