畑に吹く風

 春の雪消えから、初雪が降るまで夫婦二人で自然豊かな山の畑へと通います。

木の芽

2015-01-09 05:18:45 | 山菜

   これこそ大人の味だ、この味が分れば本当の大人だ、
と言う父母の言葉に背伸びをしていた訳でもないだろうが、その玄妙幽玄な味に、
雪深い山里の総てを感ずるような気持ちになってきたのは、あの頃の父母の年齢に近付いたからなのかも知れない。


雪が消え、雪国の植物総てが一気に萌え出す頃、アケビの芽、蔓の先端が伸び始める。
それを辛苦して探し摘み集める。これがこの地方で言う「木の芽」である。
一口で大人の味と表現してしまうが、幽かな苦味と、青物の味は他に比較べる味も無い。


聞くところによると、妙高の太いそれも又、関東の雪の無い地方の木の芽も、アクが強く、
苦すぎ、水に晒した位では太刀打ち出来る物では無いと聞く。昔、母が丁度良い時期に会い、
生来の手先の器用さと相俟って、大きな箕に山盛りに採った事があった。

その場所は、沢の奥深く雑木を切りに通うような道で、かろうじて普通自動車やリヤカーが入るほどの道だった。
しかし、もっと前は田圃を耕作していたような形跡が有り、昔で言う年貢逃れの「隠し田」のような存在だったのかも知れない。
その耕作跡地の水平な場所に生えた、背丈の低い「ウツギ」や、「カヤ」にアケビが繁茂して絡みつき、
格好の「木の芽畑」になっていたのだった。今程山菜採りがブームで無く、
山菜採りが雪国の人々が長い冬に決別する儀式であった頃の話だ。
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マックスの仕事始め

2015-01-08 07:42:25 | マックス

 一昨日は珍しく晴れて、ひょっとしたら「暖冬小雪」が当たりか?なんて思わせるような一日。
マックスも晴れで気分が良かったのか、散歩に連れて出ると駅に行き、そして跨線橋を昇り始めた。

 初仕事で、跨線橋の状況を点検したかったのかも知れません。
何せ、マックスは陰の駅長さんでも有りますからね。



 階段の真ん中付近、踊り場に、「よっこらしょ」と前脚を上げたところです。
覚束ない足取りなのだけれども、「前進あるのみ」なんて頑張るマックス。



 背中のベストは、スベルべママの古セーターを使った改造品。
手編みのベストは、伸びて長くなったところを「純毛だー!」なんてマックスは齧っちゃいました。



 何時、立ち止まり帰るのかなと心配したけれども、休みつつも昇り続けます。
最後はとうとう、階段を昇り切り跨線橋の水平部分に到達


 なおも進み向こう側の階段を降りようとしたけれども、さすがに心配になり引き返します。
昇った手前側の階段も、リードで体重を少し預かりながらゆっくりと降りました。



 駅は既に日陰に入ったけれど、向こうに見える「権現堂山」は夕日を浴びてピンク色。 


 ロータリー除雪車の投雪で出来た雪の山越しに見える山々もピンク色。
次の日からは再び寒波の襲来が予報されていて、束の間の晴れ間のことでした。

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アンニンゴ

2015-01-07 12:15:34 | 山菜

 山の畑の周りに何本かの「アンニンゴ」の木がある。五月になり畑の仕事が忙しくなる頃、
蕾が膨らみ始め採り頃となる。


 「アンニンゴ」は越後の呼び名で正しくはバラ科の「うわみずザクラ」または「うわみぞザクラ」言う名である。
腰が強く、折れにくい木質は鎌や、鉈の柄としても使われそのため「ナタヅカ」と呼ぶ地域もあるようだ。
最近は雑木も切られることが無くなり、大木となった「アンニンゴ」も見受けられる。 


 仕事の帰りに採って帰ると、妻が簡易漬物器で塩漬けにする。酒、ビールのつまみに美味く、
又、妻は弁当の付け合せにご飯の上に何本か載せてくれる。独特の香りが特徴で、しいて例えるなら、
昔親が割って食べさせてくれた梅干の核の香りに似ている。


 蕾の内は他の緑に紛れて分り難いが白く花が開くとその木の多さに驚く。
その実を焼酎に漬けたのが「アンニンゴ酒」である。しかし、実の採取時期を誤ると酷い目に会う。
普通は身が青いうちに仕込むのだが、父がある年張り切って熟した実で作った。
ところが飲み頃と思えた頃、焼酎の表面に細かい虫が涌き、その匂いは嫌われ者のカメムシそのものであった。
カメムシがある時期卵を産み付けるらしい。秋まで残った実は最後は艶のある黒色になり甘い味となる。
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平茸

2015-01-06 12:15:37 | 山菜


  平茸
 何年か前に小千谷の知人から「平茸」を頂いて、その美味しさに驚いた。
栽培物は「シメジ」の表示でも売られる、濃いグレーの美味しい茸なのだ。
しかし、大きくて、肉厚で美味しいその茸が、近くに出るとは思いもしなかった。


 その年は暖冬で、十二月になっても中々雪は積もらない。時間を持て余し気味になり、
椎茸の栽培を思い付いた。早速チェンソーを持ち出し、山の畑の脇にある我が家の雑木林に入った。
ふと気が付くと、立ち木に平茸が出ているではないか。半信半疑で採って帰り、
知人に聞いたが、間違い無さそう。 


そこで、自分なりに出る場所を推理して、休日に山に入った。目的とした、
中越地震で崩れ落ちた木には全く無かった。しかし、諦め気味に尾根に取り着いて昇ると、
推理に間違いが無かった事に気付く。目を疑うような光景だ。平茸が重なり合って出ていたのだ。


 根元から二本に分かれた大きな楢にも出ていた。その間に身体をこじ入れ、よじ登って採った。
何本かの楢の木で平茸を採ると、スーパーのレジ袋は二つ満杯だ。中には手の平の倍、
子供の野球グローブほどもある大きい物も有った。

 その年は、それからリュックサックを背負い、
初雪が降ってからさえ、尾根や山中をさまよい「平茸」を採り続けた。
そんな良い思いも、やがて人の知るところとなり、
そして、立ち木が古くなってほぼとして終りになってしまった。
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カタクリ

2015-01-05 07:46:06 | 山菜
 カタクリ


 長かった越後の冬も、四月に入るとそれまでの寒さが嘘だった様に急激な気温の上昇を迎える。
雪は日に照らされる表面と、地温の上昇と、地面を伝い流れ始める雪解け水により、急激に溶ける。


地面が出ると、モヤシのような状態で、「カタクリ」の芽が姿を現す。元気の良い芽は、
薄くなった雪を突き破ってさえ伸び出す。そして次には、葉を広げ紫色の可憐な花が咲くのだ。
出始めて数週間でその姿を消して雑草に隠れてしまう。


 我が家の山の畑に通う広域農道と呼ばれる、広い舗装道路の脇に、
何十アールにも及ぶ「カタクリ」のお花畑が出現し、その美しさに毎年自動車を停めて写真を撮る事となる。
 一年の内の僅かな時間だけ地表に現れ、花を咲かせ、実を付け終わりになる。
後は球根として土の中と言う一生なのだ。


 根、球根からは「片栗粉」が取れるという。しかし、
小さな球根から大量の澱粉を採取するのは並大抵の事では無いだろう。
 あまりにも美味しそうな、その柔らかな「カタクリ」の葉を一度食べた事がある。
お浸しで食べて見ると確かに美味い。
しかし、その後、身体に異変も感じた。長岡の飲み屋で話の種にすると、
綺麗なそこの女将に「美味しいですよねー」の言葉の次いで、ニヤリとして言われた。
「あなた、お腹を壊さなかった。」と。


  (こんな形で、間も無く新聞連載が始まります。
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