夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

「禁忌の水」ー一典ー1-

2012-08-18 19:50:30 | 自作の小説

じーじー鳴くのはアブラゼミ
かなかな鳴くのはヒグラシ
それからツクツクボーシ ツクツクボーシと鳴くツクツクボウシ

草の中ではキリギリスが鳴いている

夏 子供の頃は どれも聞き分けられた

今は異界にいるように鳴き声を聞き分けられない

あれは 蝉の声か
奥では鳥も鳴いている

さすがにカラスの声は分かるが

麓に車を置き 半時間ばかし歩いて代々の墓に辿り着く

墓地の中央には泉があるが その水は 墓参り以外に使ってはいけない

決して飲んではいけない

生きながら亡者になってしまうのだと言う

生きながらの亡者が どういうものかは よく分からない

墓地の中の泉は死者のもの

盗んではいけないということか

死者の穢れが生きた人間に入ったら

昼だというのに 夏だというのに寒気がする

ぞくり ぞくり

禁忌

もしおかしたら どうなる

後悔するに違いない好奇心

泉の澄んだ水

それは うまそうだ

招くように光っている

鳥だか虫だかの鳴き声がうるさい

ああ 喉が渇く

ひと口 どんな味がするのか ほんのひと口

ダメだ ひと口では足りない

もう少し

ああ 飲んでも平気じゃないか

普通に冷たく うまいぞ
この水は

ーダメだって言ったのにー

ーあんなに大声で注意したのにー

ー・・・に なってしまうってー

気がつくと 虫が寄ってきていた

泉に映るのは 蟋蟀

人としての形は失われ

ああ そうなのか

そうなってしまうのか

納得し

じきに

人であったことも 忘れた


夏の夜は怪談

2012-08-18 19:14:12 | 子供のこと身辺雑記

一階の洋間と和室は仕切りの建具を外せば ひと部屋のようになる

テレビのある和室に長男 洋間に娘
それぞれ自分のパソコンいじって過ごしている

今夜9時から「土曜プレミアム ほんとにあった怖い話 夏の特別編2012」
娘が和室のテレビで「お兄ちゃんと観るのを楽しみにしてる」ってと 長男に言ったら

長男「絶対いやや そうなったら 自分の部屋に閉じこもる」
と言った

長男はホラーが嫌いで お化け屋敷にすら 絶対に入らない

たいてい こちらのテレビで一緒に娘も観ることになるのだけど

ちょっとからかうと長男は面白い反応をしてくれます


肉豆腐

2012-08-18 16:48:27 | 子供のこと身辺雑記

肉豆腐
肉豆腐
肉豆腐
先にすき焼きふうに牛肉を甘辛く味付けて煮たら いったん別容器に取り出します
肉を引き上げた後の煮汁に白菜・糸蒟蒻・焼き豆腐を入れ煮ます

白菜が柔らかくなり 豆腐や糸蒟蒻に味がしみてきたら 牛肉を戻してのせて出来上がり


「堕恋」もしくはー繭の見る夢・序ー玲ー

2012-08-18 10:35:15 | 自作の小説

姉は狂ってしまいました

ええ お義兄さん
不実な貴方が死んだから

他の女と心中した貴方を想って

三年前 貴方がよその女と出て行ってから
ひたすら一途に帰りを待った姉でした

ただただ貴方を愛した姉でした

姉は
貴方を呪いも恨みも憎みもせず

貴方を愛し 貴方から愛されていた自分だけの世界に
行ってしまいました

それにしても 貴方はひどい男です

ー君の姉さんの愛は重すぎるー

それが浮気の動機 自分の正当化だなんて

ねぇ

いっそ 姉に愛想尽かしをすればいいものを

どうせ死ぬなら 不要な命なら
姉と一緒に死ねば良かったじゃないですか

捨てていく姉の前では ええ格好しぃ

あんなに儚い頼りなげな姉を

だからこそ 貴方は私を捨てて 姉を選んだ

妻にした
はずだったでしょう

ー君は一人でも生きていけるー

陳腐な台詞
それでも私は 姉が好きだったから

だから!

美しい姉を愛していたから

なのに 何処まで貴方は人を私を踏みつけにするのでしょう

姉を此の世に棄てていった貴方

そうして姉の精神(こころ)は とうとう壊れてしまいました

私に残ったのは
狂った姉

もう何も分からなくなった美しい人

だから貴方を恨みはしない

私もこれで 姉に罪悪感など抱かせず 姉を苦しめず

弟でなく
男として ずっと崇め愛し続けた女性を ためらいなく抱くことができる

私は
そう 幸せな恋など出来ない人間

自ら望んで地獄へ堕ちよう

生きたまま


「愛しいあなた」ー繭の見る夢よりー沙世子ー1-

2012-08-18 01:46:07 | 自作の小説

白い骨があります
灼かれてしまって あの人は
ただただ白い骨になってしまいました

火葬場で係りの人が 人の形を残していた あの人の骨を 説明しながら 割って砕いて潰していくものだから
あの人は随分身長もあったのに

こんなに小さな ちっぽけな骨壺の中に ちんまりひっそり納まってしまって

あの人の大きな温かだった掌は あたしを抱き締めてくれた あの腕は
添って眠れば安心できた あの肩は

いったい何処へ消えてしまったのでしょう

もうもう 白い骨しかありません

耳当てて 聞いた胸の音

冬は少し後から布団に入れば とっても温かだった

だから あたしはいつも後から湯を使い 遅れて冬は布団に入った

悪い夢を見ても あなたの腕に縋って眠れば安心でした

あなた あなた あなた

こんなに小さな骨壺の中

こう掌に載せ 小さな骨を あなたの一部を 唇に押し当てています

白い小さな骨の破片(かけら)

あなた あなた

ねぇ
夢でいいから 姿を見せて下さいな

逢いに来て下さいな

でないと

あたし狂ってしまいます

せめて夢の中でいいんです

あたしを忘れていないなら

出てきて下さいな

白い小さな骨抱いて あなたを待っていますから

愛しい愛しいあなたの白い破片
大事に大事に

掌の中

瞼閉じ 思い浮かべるあなたの姿 胸の中で抱き締めています


「ただ 歩く」

2012-08-18 01:06:58 | 自作の詩

鬼灯が一つ ぽつんと落ちていた

灯りを目指して歩いていたが

あの灯りは何処へいったのか

代わりに赤い鬼灯一つ

耳を済ませば せせらぎの音

頼りなく揺れて飛ぶは蛍か

一つ二つ 微かに光る淡い黄色

いったいここは何処なのか

夜に違いはない

星も月も無いけれど

昼と呼ぶには 余りに暗い

其処にある鬼灯にさえ 手が届かぬ

視(み)えているのに

何故 こうも遠い

嗚呼 せめて もう少し歩いていこう

鬼灯に手が届くまで

鬼灯一つ 手に取れるまで

しかし 私は独りきり 暗い道を何処まで歩いていけば良いのだろう

川にはたどり着けるのか

私は何処かへ行けるのか

すぐ其処に 鬼灯一つ落ちてはいるが