子供の頃からずっとずっと姉が好きだった
ただ一人の姉 姉は誰よりも美しく優しかった
両親が事故死したあとは 姉と古く大きな家に二人きり
他に目を向けようと学生時代は努力もしてみた
コンパにも出た
馬鹿だった
恋人に近い相手はできた
だが この身を委ねることは 全てを託すことは 出来なかった
恋愛しようなど この身体では無理だったのだ
しかも相手の男は姉に目を付けた
姉は 世間慣れしていない姉はー甘く優しい男の言葉を信じ 一途に愛した
姉が幸せなら 良かった
我慢も出来た
そうだ 幸福でいてくれ
姉を幸せにしてくれ
だがー
あの男は 竹丘康三は
たった二年で 姉を捨てた
金が自由にならなかたからだ
私は あの男を信用していなかった
手は打っておいた
他の女と暮らしながら 籍は抜かなかった狡い男
金の切れ目が縁の切れ目 女は康三を捨て他の男へ走ろうとする
プライドだけは高い康三は 自分を捨てようとする女が許せず
心中
いや あれは互いに殺し合った結果
自堕落な男と女の地獄への道行き
そんな康三を 姉は狂った身で恋しがり きょうだいである私を康三と 自分の愛する夫と間違えた
入浴や着替えの世話をする私を
ああ 私は自分に負けた
姉を愛する自分の心に負けた
姉は 私の子供を産んで死んだ
姉に似た女性が その子供を 真を世話し育ててくれている
私は 真と彼女とを守ろう
この私に何があろうと 二人が安心して暮らせるようにしておこう
真には絶対に誰が父親か 悟られてはならない
罪は私にある
まともでは 普通ではないこの身体
私は 生きながら地獄の色に染まっている