何処にいても その女は現れる
エレベーターの天井に張り付き 広がり やがていっぱいになる
通路を凄まじい勢いで移動し こちらの体を突き抜ける
その姿を見たくなくてー
眼を潰した 両手で 眼を 十本の指で眼を抉った
失敗だった 暗黒の瞼裏いっぱいに女の姿が広がる
逃げられない
ずっと瞼の裏に女の姿が広がっている
もう その姿から眼を背けることもできない
その女が何故 執拗に追いかけてきたのか
そして今度は瞼裏に棲みついたのか 理由は分からない
だが もう限界だった
女の姿を見続けることに耐えられなかった
だから だから 確実な死を願い 死に憧れ
平穏を求めて
女から逃げるために
死による救いを求めて 飛び降りた
部屋は十階
間違いなく 死ねた
しかし それも失敗だった
茫洋と自分の死んだ体を見下ろしていると 女が言った
ーやっと同じ世界へ来てくれたのねー
死んでも逃げられないのか
絶望に襲われていると 女が続けた
ーわたしは面食いなの あなたはわたしの好みにどんぴしゃり!だったのよー
ああ 死ななきゃよかった
もう遅いけれど