goo blog サービス終了のお知らせ 

夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

「繭の見る夢」ー総力戦ー1

2013-08-20 20:31:44 | 自作の小説

竹丘真の暮らす家で 既に客としていた久保山紀梨子

それから車を運転してきた加佐矢優希 その車で運んでもらった希梨子の母の沙月 沙月の連れとなった華守ゆきえ

五人の人間が会うことになった

加佐矢優希 真が十歳まで育ててくれた女性

今は優希が亡くなった母の妹になることは 真も知っている

祖父の巴弥都真太郎(はやと しんたろう)が遺した資料で

真の祖母の姉になるきぬえが巫女の後継に選んだ優希

優希は自分の為に人生を棒にふったのではーと再会の喜びの挨拶の言葉がなかなか真は らしくもなく出せなかった

「立派に育ってくれたのね いじけもぐれもせず」と優希の方から声をかけた

赤ん坊の時から育てたのだ 自分の子供といっていい感情を愛情を抱いている

事情あり肉親の愛情 存在とは縁が薄い

そのように暮らさなければ生きてこられなかった

母の姉のきぬえとの暮らしは 伯母との暮らしは優希にとって幸せなものでもあった

両親 姉妹が巻き込まれた戦いを終わりにしたいと優希は固く決心をしている

そのためのきぬえのもとでの十年以上の修業だった

「長い運転 お疲れ様でした 休む部屋を用意してあります 先に風呂がよければ

そちらも準備しています まずは冷たいものでも」

それぞれの紹介が済むと 真はそう言った

まだ 緊張している

子供の頃ならすがって素直に甘えられる 

しかし そうしかし

沙月に会った紀梨子はもっと単純 素直に養母との再会を喜んでいる

ついてきてくれたゆきえにも礼を言い

そうしてゆきえは人には見えない腕の蛇が ズキズキと痛むのだ

まるで何かを知らせるように

知らず腕をさすってしまう

死んだ母に似た雰囲気の沙月が気になりついてきてしまったものの 紀梨子と沙月が無事に再会したら ちょっと用無し 余計者にも自分のことを感じるのだ

早々に失礼したほうがいいのかもしれない

そう考えることが既に何かの影響を受けていたのか

弱いところから攻撃を受ける

ましてやまだゆきえは何も知らない

影響を受けやすい 誘い出されやすい

食事までの時間 風呂に入り楽な服に着替え それぞれ与えられた部屋で少し休むことにした

そうして眠りからさめると庭でも散歩しようと ゆきえは家の外へ出た

ふらふらとー

まるで何かに呼ばれるように

遭遇したのは 黒い闇

急に夜になった

進めなくなる

押し寄せてくるものは恐怖だった

腕が痛い 腕の蛇が熱を持っている

この闇に飲まれてはいけない なんとなく それは分かった

でも どうすれば防げるのか

腕の蛇が警告を発する

浮かんだのは弟の一馬 それから竹丘真 竹丘さん助けて!助けて!

救いを求めるしかできなかった それも声には出せず 心の中で

それが本当に精一杯

そのままくずおれた

心はあげない のまれない 絶対に

こんなものと一緒になるのはイヤ

闇が ゆきえにおおいかぶさろうとする

その時に両手を広げてたちはだかったのは わ道具屋の女だった

それから黒い烏

彼等は闇と戦いー

ゆきえを案じる一馬と真の声を聴くと 姿を消した

一馬は何か嫌な胸騒ぎが止まらず ゆきえが行くと言っていた竹丘の家にかけつけたのだが

姉の姿は家の中に無く 真を道案内に姉を探しに出ていた

頼りないくせに優しくて 優しいのに口が悪い姉のゆきえ

大切な家族

その姉が倒れている 周囲を不思議な闇が包もうとしている

ぐっと一馬の手首を竹丘が掴んだ

「巻き込んでしまった すまない アレの狙いは僕なんだ」

竹丘が掴んだ場所から力が流れてくる

何かが背中から剥がれる 体から飛び出す

一馬の体から飛び出したモノは 闇を引き裂いた

ーあれはー

一馬の意識は飛ぶ

ため息ついた竹丘真が一馬を背負い ゆきえをお姫様抱っこで運ぶという力業などしてみせたことも知らずにいた

どういう因縁か

集まった人たち

その人たちの安全を真は思う

「繭の見る夢」黒ぼっこ↓関連作です 読んでいただければ嬉しいです

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20120930

「繭の見る夢」-恋ー2↓

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20121117

「解放ー或る物語の外伝」↓

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20130820

 


「解放ー或る物語の外伝ー」

2013-08-20 02:00:12 | 自作の小説

ずっと傍観者のように流れて生きてきた それを生きていると言えるならー存在してきた

自ら 積極的にかかわることなく いわくある道具を集め 磨き もとの普通の道具にできるかぎり戻してきた

華守ゆきえを襲った黒いモノに触れてー

長いこと「わ道具屋の女」だったモノは 彼女は自分が人間であった時に抱えていた闇を思い出してしまった

集めていた道具の大半が彼女を呼んだ理由

嫁いだ家の蔵に在ったモノたち

嫁ぎ先の家の人間を皆殺しにした連中の闇に染まり変貌を遂げてしまった道具が本来の姿に戻りたくて

彼女を呼んだのだ

呼ばれたら行かなくてはならない

闇に染まった道具を集めては 磨いてきた

補修してきた 長い長い時間

これまで積極的に戦ったことはない

ごく普通の人間であった頃も

運命に流されるだけだった

わ道具屋になってからも それをやめようとか 抵抗しようと思ったことはない

それが 僅かな時間に言葉を交わしただけの娘の為に

どうして戦おうと かなわぬまでも娘の救い手が現れるまでの時間稼ぎをしようと思ってしまったのか

娘はまだ自分の「本当の力」に目覚めてはいない

たいていの人間は自分の持って生まれた力を必要とすることなく その生を終える

たいていの人間は こんな闇と戦う必要がないからだ

闇に染まった心持つ人間のために わ道具屋の女の嫁ぎ先で暮らす人間は皆 惨殺された

何かが わ道具屋の女をこのあたりに引き止めていた

気になった娘

一人になったところを襲われた娘

たぶん何かの運命を背負っているがために 闇を使う側のモノに疎ましく思われたのだ

それは義憤だったのだろうか

それともーそう 「それとも」

輪廻転生の輪から外れてしまったわ道具屋の女

運命は「輪」に彼女を戻したいのだろうか

闇は夜にもっとも力を奮う 迷惑にも

そうした理屈は わ道具屋の女の中から弾け飛んでいた

黒い波となって倒れている娘を飲み込もうとするモノの前に両手を大きく広げる

わ道具屋の女は 戦い方など知らないのだ

その女の前に今まで彼女が旅をし集めたモノたちが集まる

それらは彼女を守ろうとしていた

熱いモノが女の胸に満ちる

そうして道具だけではなくー

バサバサーバサリ!大きな羽音がして黒いモノが降り立った

烏は黒い翼を背に持つ人の姿となる

闇の襲撃からの防波堤としてー女の前に立っていた

「振られた女の妄執を利用したあくどい闇は大っ嫌いだ」

その声ー

女は目を見張る もうこの世では会えないと思っていた相手

ちょっと駄々っ子のような時々ひどく優しく深い響きを持つ その声

形を変える黒いモノと戦っている

「お前が守りたいものなら 頑張ってみる」びっくりしている女へと笑いかける

そして戦いに戻っていく

圧倒的な質量持つ びっしりした闇に攻撃を加えている

たかが一羽のカラスが

無謀だった

そこにあるモノは「愛」

守りたいという強い気持ち

それは闇を怯ませ またさらに猛々しくさせるようだった

幾重にもひねくれているゆえに

黒い羽が散る 翼が刻まれる

それでも男は飛び上がる よろめきながらも飛んで攻撃をくわえる

ごく普通の人間であった頃 できなかったこと

ただ守るということ 守り抜くこと

傷も痛みも男にはむしろ嬉しいものだった

愛するモノのために

この黒いモノに飲み込ませはしない

きらきら黒い羽が輝く

そうした戦いが行われていることを倒れている娘は知らなかった

ただ闇に飲み込まれまいと心を閉ざすだけでせいいっぱいであったから

ー最期は一緒にー

わ道具屋の女は傷だらけの男の指に手を伸ばす

指を絡ませる

もう守られるだけでは終わらない

どんな終わりでも一緒に迎える 生きていく

思っていた

今度会ったら 会えたなら どんな形でも この手を離しはしないのだ

愛しているのだから

それが共に倒れることであっても

一緒にいる

姉を探す一馬と 案じる竹丘真の声が聞こえていた

ーもう大丈夫だ

わ道具屋の道具達と わ道具屋の女と黒い翼ある異形の男は 黒いモノにはじかれ 消えた

そして戦いは 竹丘真と一馬の本来の戦い手へと移る

それは また他の物語となる

結果として わ道具屋の女は まだ わ道具屋のままだ

ただ寄り添う烏は人間の姿にも戻る

わ道具屋の女の旅は もう孤独なものではない

わ道具屋の女が集めるべき道具は まだまだ残っているから

旅は まだまだ終わらない

「今も探している」↓

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20130817

「ずっと愛している」↓

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20130818

「風呂鏡」↓

http://yumemi.blogzine.jp/zatuansitu/2008/08/post_4e34.html

「わ道具屋ーもしくは風呂鏡その後ー」↓

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20080814

「待ち針の話」ーわ道具屋ー↓

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20080815

「貰った刀」-わ道具屋ー↓

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20080828

「不幸を呼ぶモノ達」-わ道具屋ー↓

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20080831

「剣と待ち針」ーわ道具屋ー↓

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20080914