竹丘真の暮らす家で 既に客としていた久保山紀梨子
それから車を運転してきた加佐矢優希 その車で運んでもらった希梨子の母の沙月 沙月の連れとなった華守ゆきえ
五人の人間が会うことになった
加佐矢優希 真が十歳まで育ててくれた女性
今は優希が亡くなった母の妹になることは 真も知っている
祖父の巴弥都真太郎(はやと しんたろう)が遺した資料で
真の祖母の姉になるきぬえが巫女の後継に選んだ優希
優希は自分の為に人生を棒にふったのではーと再会の喜びの挨拶の言葉がなかなか真は らしくもなく出せなかった
「立派に育ってくれたのね いじけもぐれもせず」と優希の方から声をかけた
赤ん坊の時から育てたのだ 自分の子供といっていい感情を愛情を抱いている
事情あり肉親の愛情 存在とは縁が薄い
そのように暮らさなければ生きてこられなかった
母の姉のきぬえとの暮らしは 伯母との暮らしは優希にとって幸せなものでもあった
両親 姉妹が巻き込まれた戦いを終わりにしたいと優希は固く決心をしている
そのためのきぬえのもとでの十年以上の修業だった
「長い運転 お疲れ様でした 休む部屋を用意してあります 先に風呂がよければ
そちらも準備しています まずは冷たいものでも」
それぞれの紹介が済むと 真はそう言った
まだ 緊張している
子供の頃ならすがって素直に甘えられる
しかし そうしかし
沙月に会った紀梨子はもっと単純 素直に養母との再会を喜んでいる
ついてきてくれたゆきえにも礼を言い
そうしてゆきえは人には見えない腕の蛇が ズキズキと痛むのだ
まるで何かを知らせるように
知らず腕をさすってしまう
死んだ母に似た雰囲気の沙月が気になりついてきてしまったものの 紀梨子と沙月が無事に再会したら ちょっと用無し 余計者にも自分のことを感じるのだ
早々に失礼したほうがいいのかもしれない
そう考えることが既に何かの影響を受けていたのか
弱いところから攻撃を受ける
ましてやまだゆきえは何も知らない
影響を受けやすい 誘い出されやすい
食事までの時間 風呂に入り楽な服に着替え それぞれ与えられた部屋で少し休むことにした
そうして眠りからさめると庭でも散歩しようと ゆきえは家の外へ出た
ふらふらとー
まるで何かに呼ばれるように
遭遇したのは 黒い闇
急に夜になった
進めなくなる
押し寄せてくるものは恐怖だった
腕が痛い 腕の蛇が熱を持っている
この闇に飲まれてはいけない なんとなく それは分かった
でも どうすれば防げるのか
腕の蛇が警告を発する
浮かんだのは弟の一馬 それから竹丘真 竹丘さん助けて!助けて!
救いを求めるしかできなかった それも声には出せず 心の中で
それが本当に精一杯
そのままくずおれた
心はあげない のまれない 絶対に
こんなものと一緒になるのはイヤ
闇が ゆきえにおおいかぶさろうとする
その時に両手を広げてたちはだかったのは わ道具屋の女だった
それから黒い烏
彼等は闇と戦いー
ゆきえを案じる一馬と真の声を聴くと 姿を消した
一馬は何か嫌な胸騒ぎが止まらず ゆきえが行くと言っていた竹丘の家にかけつけたのだが
姉の姿は家の中に無く 真を道案内に姉を探しに出ていた
頼りないくせに優しくて 優しいのに口が悪い姉のゆきえ
大切な家族
その姉が倒れている 周囲を不思議な闇が包もうとしている
ぐっと一馬の手首を竹丘が掴んだ
「巻き込んでしまった すまない アレの狙いは僕なんだ」
竹丘が掴んだ場所から力が流れてくる
何かが背中から剥がれる 体から飛び出す
一馬の体から飛び出したモノは 闇を引き裂いた
ーあれはー
一馬の意識は飛ぶ
ため息ついた竹丘真が一馬を背負い ゆきえをお姫様抱っこで運ぶという力業などしてみせたことも知らずにいた
どういう因縁か
集まった人たち
その人たちの安全を真は思う
「繭の見る夢」黒ぼっこ↓関連作です 読んでいただければ嬉しいです
http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20120930
「繭の見る夢」-恋ー2↓
http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20121117
「解放ー或る物語の外伝」↓
http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20130820