白昼堂々と乱入してきた男たちの一人に見覚えがあった
遊里の女の居る店にいた男
こちらをねめ回すような何か嫌な目つきで見る男だった
ただの物奪りではないー
これは わたしのせいなのだ
あの女ー
しつこさとたかる強欲ぶりが鼻についた
しとやかさなど欠片もなく ただ図々しく下品であつかましい
何故 あんな女が 僅かな間でも「いい女」だと思えたのか
それが妻になりたい この家へ嫁として入りたいーと言い出した
その申し出とやらを断ったための復讐 仕返しか
ならば せめて妻だけでも 妻は守らねば
こんな男たちが あの美しい妻を見たらー
すべてわたしが悪いのだ
妻を傷つけさせてはならない
見つからない場所へ 妻を隠した
わたしにとって 妻こそが一番の宝 大切なもの
最期に願ったのは 妻が生き続けてくれること
どんな形でも この世に存在していてくれること
そうしたら いつか 何処かで出会えるかもしれない
もっともっと大切にするのだった
バカだ わたしは
気が付くとわたしは烏になっていた
禍々しい黒い大きな鳥
嬉しいことに翼がある
飛んで妻を探した 必ずどこかにいるーと信じて
彼女はー
彼女はいた
ずっと一人で旅している
不思議な旅を続けている
何かを探して
笑い声をたてることは殆どないが たまにうっすらと微笑みをうかべる
わたしはひっそりとその旅に同行している
もう この腕で 彼女を抱きしめることはかなわないがー
共にいることは できる