夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

「この夜を壊せたなら」-異形狩りー4

2013-08-28 14:48:26 | 自作の小説

走り出して暫くするとデレクが驚いたように言う

「この外観で荒地も平気なのか」

「攻撃力も戦車と変わらないわよ 特別仕様だから 色々{いい知り合い}がいるのよ」

「-知り合いーねえ」

砂とサボテンと乾いた空気 その中でデレクは殆ど食べられた死体を見つけた

その無残な食べられ方が気になった

調べに戻ってーそれからの記憶がない

死体はもう残っていなかった

どうして自分は食べられなかったのか

「餌がふえた」あの言葉

ーでは 奴らは人間を食べるのか もしや同族でも?

獣と変わらない そういう種(しゅ)がいるのか

「いつから吸血鬼に どうして吸血鬼になった」

横にいる女性へ デレクの考えは戻っていく

少し間があった 答えないつもりかと思った頃 返事があった

「ここと同じような砂漠で 私は死にかけていたの 十代初めの少女だった どうしてか大きな怪我をして血まみれでーゴミのように落ちていた

お人よしの吸血鬼が通りかかり その吸血鬼は{医者だったことも}あった まあ研究者だったらしいのだけど

そして連れ合いも金髪の女性で 金髪には弱いとかー

名前をミリオンと言うのよ 本人も見事な金髪巻き毛でね 深い緑の瞳のー

で 出血が激しい私は 傷も深くて 手の施しようがなくて

死なせないために 自分の血をくれたのよ         やがてー

私の傷は塞がり 命をとりとめた

ミリオンは私が元気になるまで面倒を見てくれたわ

そして別荘番の仕事をくれた

私の成長は緩やかになり 完全に止まった

ミリオンはそれを怖れていたのだと言った

私の吸血鬼化 だから助けた後は 人間世界へ私を戻さなかったの

異常がなければ 人間のままならいいいけれど

誰かが {異常}に気付いたらー

ミリオンも型破りな吸血鬼だったから 太陽も十字架も平気 

時には神父にだって変装する

だから私も吸血鬼としては風変りなのかもしれないわ」

デイアンが一息ついたところへ 見覚えある車とデレクは行きあった

ライアンも気付き方向転換して横に並んだ

「デレクおじちゃん」「おじちゃん」「兄さん」

デレクは停車すると車から降りた

ブライとエラがデレクの広げた両手の中へ飛び込んでくる

「心配したのよ 兄さん 一体 何があったの」

「怪我をして彼女に助けられた」非常に簡潔な説明と共に デイアンをデレクは指さす

キャスリーンはちょっと息をのんだ

「初めまして 妹さんですか? 私はクリステイーネ デイアン  デレクに会いにブラックリバータウンへ行く途中 偶然に出会ったんです」

「兄がお世話になりました 兄とは大学-でのお友達?」

「ええ 彼が暮らす街に住んでいたこともありました」

「ああ ごめんなさい 私はキャスリーン  キャスリーン ローマンです

兄ったら こんな美人の知り合いがいるなんて一言も

驚きましたわ 

これは私の子供達で ブライアンとエレイン

そして こちらは副保安官のライアン モンゴメリ」

ライアンは無言で頭を下げる

デイアンは優雅に微笑んだ

「噂通り素敵な妹さんね やっと会えて嬉しいです」

女たち二人は互いの力量をはかるように 観察しあっている

男二人は この場を和らげる話題が見つけられない

「この夜を壊せたなら」-異形狩りー3  ↓

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20130828

ミリオン関連作品です↓

「紅葉狩り外伝―ミリオン独白―」 

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20061026

「眠る記憶の底から・1」

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20071019

「眠る記憶の底から・2」

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20071019

「眠る記憶の底から・3」

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20071019

「眠る記憶の底から・4」

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20071020

あと関連して この先出てくる予定の高崎亜貴欧さんの出てくる話↓

「紅葉狩り外伝―妖怪始末人―1―」

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20061102

「紅葉狩り外伝―妖怪始末人―2―」

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20061102

「紅葉狩り外伝―妖怪始末人―3―」

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20061104

「紅葉狩り外伝―妖怪始末人―4―」

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20061106

「紅葉狩り外伝―妖怪始末人―5―」

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20061107

「山の宿・一」

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20070927

「山の宿・二」

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20071002

「山の宿・三」

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20071006

「山の宿・四」

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「山の宿・五」

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「山の宿・六」

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20071013

「山の宿・七」

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「ぼやく闇」

http://blog.goo.ne.jp/yumemi1958/d/20071015


「この夜を壊せたなら」-異形狩りー3

2013-08-28 00:21:56 | 自作の小説

時に忘れられたような町 ブラックリバータウン

そこの保安官のデレク ローマンが姿を消して五日目になる

必ず毎日事務所に姿現すし 行先ははっきりさせておく男だった

デレクの片腕で副保安官の一人ライアン モンゴメリは 暇な時間に探していたが その調査の輪をもっと広げることにした

「私たちも一緒に行くわ」

車に乗ろうとすると声をかけられた

キャスリーン ローマン  デレクの妹だ

大学へ行ったデレクと違い 18でロバート ハドソンと結婚して 二人の子供を産んだ

そのロバートがかなり間抜けな死に方をしたためか 夫の死後 キャスリーンは旧姓に戻った

一階が宿屋の食堂を営んでいる

「私の兄よ あなた一人じゃ手が回らないこともあるかもしれないーでしょう?」

キャスリーンはライアンより2学年上だった

いわば憧れの上級生

ライアンはぶが悪い

いささか憮然とした気持ちと嬉しい気持ちが半ば

仕事でなくてデートならばーたとえ子供が二人一緒でも

未亡人ということで より自分を律して生きているキャスリーン

浮ついた目で見てはいけないのだった

「ボスはー何か気がかりなことがある 確かめてくる すぐ戻るーそのまま帰ってきていない」

「デレクは肝心なことは言わない妙なクセがあるから」

キャスリーンは子供たち二人と後部座席におさまった

ブライと呼ばれるブライアンは9歳 エラと呼ばれるエレインは7歳だ

「こんにちは副保安官」「こんにちは」礼儀正しく挨拶をする

「こんにちは ブライ エラ」

「ぼくたちデレクおじさんを助けに行くんだ」

「おじさんは喜ぶと思うよ」

「どっか間抜けだから 落とし穴にでもかかったのかも」と厳しいことをキャスリーンは言う

その実ひどく心配しているのだった

「何か見つけたら教えてほしい」

ライアンは車をスタートさせた

同じ頃 本来の姿に戻ったクリステイーネ デイアンは デレクを車まで案内した

「車を持っていたのか」

「非常用よ 無免許だし」

睨むデレクにデイアンは続ける「私が吸血鬼ってことが飲み込めてないのね 

偽名を使うのは性に合わないの 吸血鬼ってね 案外生活しにくいものなのだから」

「そういえば吸血鬼って太陽の光がダメだろう」

「あれは小説ー私はクリスチャンでもないし 日焼けが嫌なだけで太陽は嫌いじゃないわ」

「日焼け」

「お肌に悪いもの」

どこまでマジメなのかもわからない 

デレクの運転でブラックリバータウンへ向かった

「そもそも どうして捕まるなんてドジ踏んだの」

デレクはむすっとした「覚えてない」

「まあ 昔っから忘れるのは得意だったものね あなた」

「何の話だ」

「別にーいつか思い出せるといいわね」

クリステイーネ デイアンは デレクが血を抜かれたことが気になっていた

消滅した村

ブラックリバータウン 共通点はおそらくー

ひっそりと暮らすしかない一族の その者達の血が何かに利用されている 研究されているとしたら

おそらく目的はろくなものではない

手に負えないことに 手をだしているのかもしれなかった

「この夜を壊せたなら」-異形狩りー2  ↓

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