ー鬼となった娘ー
四方を山に囲まれ僅かに拓けた地が 一族の代々暮らす場所であった
美しい水を湛える湖もあれば 清い流れの川もある
春ともなれば山野にはとりどりの花々が咲き乱れた
長(おさ)の娘はその花々も褪せて見えるほどに美しく・・・・・名を紗穂(さほ)と言う
守備隊長の息子の東風丸(こちまる)と近く夫婦になることが決まっていた
自身も紗穂を妻にと望み 叶わなかった男がさる大国へ 紗穂の美しさを知らせてーーーーー
大国の主の息子は娘一人を奪うのに大軍で その美しい場所を攻めた
焼き討ちをかけられて多くの民が焼け死んだ
紗穂を逃がそうとした東風丸は捕えられて 娘の目の前でなぶり殺しにされた
「お前はこいつの目が好きか では目を失くしてやろう」
そう言って目を抉り 耳をそぎ 鼻を刻み
「この腕でこいつはお前を抱いたか」
両腕も切られ 足は折られた挙句にやはり切り取られー
苦しめられ 体中の血を流しきるように
娘の愛する男は殺された
自分一人を奪う為に 一族全てを殺した男
この殺戮に関わった全ての人間を娘は呪った
「子々孫々その末裔全て絶えるまで・・・・この恨みは消えぬ
我が命消えようと この呪いは解けぬ 終わらぬ
覚悟せよ
我が魂は この仇を討つ」
美しい娘は鬼となり湖へ身を投じた
それからー間もなく
大国は他の国に攻められ思わぬ敗北
傲慢な大国の主もその息子も首を斬られた
一人殺されるごとに 湖は高笑いの声をあげたという
やがて山の噴火があり湖は無くなったが その水は大地に沁みて 姿を変えて残り・・・・・
呪いも残った
最後の一人が死に絶えるまで 呪いは消えず
形を変えた死の呪いは漂い続けた
まるで愛し愛される者を捜すように
恋の相手を求めるようにー
ただ・・・・・流離(さすらい)続けた
既に呪いの始まりすらわからぬながら 死を求め続けた
人の命も死も ソレには何の救いも与えなかったけれど
(「葬恋記」終わります)
四方を山に囲まれ僅かに拓けた地が 一族の代々暮らす場所であった
美しい水を湛える湖もあれば 清い流れの川もある
春ともなれば山野にはとりどりの花々が咲き乱れた
長(おさ)の娘はその花々も褪せて見えるほどに美しく・・・・・名を紗穂(さほ)と言う
守備隊長の息子の東風丸(こちまる)と近く夫婦になることが決まっていた
自身も紗穂を妻にと望み 叶わなかった男がさる大国へ 紗穂の美しさを知らせてーーーーー
大国の主の息子は娘一人を奪うのに大軍で その美しい場所を攻めた
焼き討ちをかけられて多くの民が焼け死んだ
紗穂を逃がそうとした東風丸は捕えられて 娘の目の前でなぶり殺しにされた
「お前はこいつの目が好きか では目を失くしてやろう」
そう言って目を抉り 耳をそぎ 鼻を刻み
「この腕でこいつはお前を抱いたか」
両腕も切られ 足は折られた挙句にやはり切り取られー
苦しめられ 体中の血を流しきるように
娘の愛する男は殺された
自分一人を奪う為に 一族全てを殺した男
この殺戮に関わった全ての人間を娘は呪った
「子々孫々その末裔全て絶えるまで・・・・この恨みは消えぬ
我が命消えようと この呪いは解けぬ 終わらぬ
覚悟せよ
我が魂は この仇を討つ」
美しい娘は鬼となり湖へ身を投じた
それからー間もなく
大国は他の国に攻められ思わぬ敗北
傲慢な大国の主もその息子も首を斬られた
一人殺されるごとに 湖は高笑いの声をあげたという
やがて山の噴火があり湖は無くなったが その水は大地に沁みて 姿を変えて残り・・・・・
呪いも残った
最後の一人が死に絶えるまで 呪いは消えず
形を変えた死の呪いは漂い続けた
まるで愛し愛される者を捜すように
恋の相手を求めるようにー
ただ・・・・・流離(さすらい)続けた
既に呪いの始まりすらわからぬながら 死を求め続けた
人の命も死も ソレには何の救いも与えなかったけれど
(「葬恋記」終わります)