城は外壁 中壁 奥を守る壁と三重の壁で守られている
これはブロディル国も似た造りとなっている
この二つの国は同じ海に面しており互いに助け合ってきた
内陸部の奥は沙漠に隔てられさほど大きくない特殊な地域とつながっている
ある理由があって並みの人間はその特殊な地域には辿り着けない
四人の王子がレイダンド王の城に到着した日 祝いの意味で外壁の内側の前庭までは開放された
旅の疲れを取るようにとそれぞれの部屋に案内され入浴をすませ着替える
暢気者の三男リトアールの従者のゲイルドは焦っていた
「他の御兄弟方は皆様着替えを終わられております 寝てはだめです リトアール様」
「旅は疲れた」
「ああ もう!立っているだけでいいのです 椅子に座って眠りこけてもいいですから とにかくお出ましになって下さい
リトアール様は身なりをととのえられたらーそれなりの威厳もあるお方なのですから!」
「威厳はアンドール 見かけのよさはブライ(ロブレイン)に 賢さはダンスタンに任せた」
無理矢理に髪をととのえられながら 未練がましく寝台を見るリトアール
「寝ちゃダメ?」
ゲイルドは精一杯恐い顔を作る「絶対に駄目です 僕が王妃様に殺されます くれぐれもと王妃様じきじきに頼んで下さったのです
ーリトアール あのコはいいコなのだけど 少し礼儀作法やしきたりを無視していけないわ
わたくしは可愛い坊やのリトアールが落ち着く姿を見たいのよー
僕は命に代えてもリトアール様にまとまっていただきます!」
「ゲイルド たぶん母上は他の兄弟の従者にも言っていると思うよ
とにかく孫を抱きたいんだから
なんでそんなにーおばあちゃんーと呼ばれるようになりたいんだか」
ぶつぶつ言いながら どうやらみられる格好になったリトアールが部屋を出ると 兄弟達が待っていた
悪戯っぽい顔でダンスタン「さすがに寝なかったんだ」
四人の王子が大広間へ姿を現すと レイダンドの国王ディスタンと四人の姫君に紹介される
上から順番の雑な組み合わせで最初は踊ることとなった
アンドールはマルレーネの手を取る
ロブレインはエルディーヌ
リトアールはアシュレイン
ダンスタンはリザヴェートと踊る
うまくダンスまでにこぎつけて四人の王子の従者達はほっとしている
「ああしていると王子にしか見えないんだけどなあ」溜息つくゲイルド
「いやいやリトアール様はおおらかだからいいぞ」ロブレイン付きのアリストも溜息
「それぞれに苦労があるってことさ」とダンスタン付きのオライス
「でも どの方も素晴らしい方々だ お仕え甲斐がある」とアンドール付きのスタイン
あれだけ嫌がったわりには眠りもせずリトアールは優しくアシュレインの話を聞いていた
ダンスタンはいつものように如才ない
リザヴェートの言葉に ちょっと面白がるような表情を浮かべている
ロブレインとエルディーヌは何か激しい言葉の応酬をしているようだがー
一見穏やかに見えるアンドールとマルレーネのやりとりは 互いの力を見切ろうと 推し量ろうとしているようでもあった
無作法になることなくギリギリのところで
「ブロディルは美しい国だとかー」
「そう あなたの瞳のような藍色のしっとりした夜 その肌のように咲く白い花がある
一度見れば心を捕えて離さない・・・」
「夜の花は 明けて見ればかすんで褪せて見えましょう」
「賢い人だ あなたの心は言葉ではとらえられないのだろうか」
静かな微笑を返すマルレーネ
敢えて言葉は返さずに
アンドールも最初から「口説き」が成功するとは思っていない
やりとりを愉しみたい男でもあったから
そんな様子を面白そうに魔法使いは見ている
面倒だから 暫くは歌うたいのベルナーと呼んでいましょう
ベルナーは魚をくれた女官のロズモンドを捜していた
長い髪を風に揺らせ陽の匂いをさせていた娘
その自由な娘がどんな女官となっているか
彼は最初の歌はロズモンドに向かって歌うつもりでいた
ーうるわしき女性(ひと)よ・・・
緑輝く野に在りて さらに煌めき増す女性(ひと)よ
その瞳 深く我を貫き その姿 我が心を射る
さぁ僕に この僕に君を愛させておくれ
その自由な心を僕に向けておくれ
その影を崇めよう
あなたの微笑みの為に僕は死のう
だから振り向いておくれ
笑っておくれ
眩しき魂持つ女性(ひと)よ
命のありったけで僕はあなたを愛したい
どうか許しておくれ
その柔らかな唇に触れることをー
ベルナーの歌声は ロズモンドの耳に届いた
声の主の方へ ロズモンドは視線を投げる
女官姿のロズモンドが自分の姿を認め気が付いて近寄ってくると ベルナーはロズモンドに微笑みかけた
「やぁ しちめんどうな髪形似合ってるよ」
微かな戸惑いを瞳に浮かべ ロズモンドは答える
「これはー巻きつけた布でごまかしたー基本 三つ編みを繰り返して・・・たたんでいるだけだ」
人懐っこい笑みを浮かべているベルナー
初めて会った時から いつも穏やかな優しい目でロズモンドを見つめてくる
破壊力抜群の美しい容姿の自覚が無いのではーと思えてくる
若い娘には「目に毒」な男なのだった
「さっきの歌は君に捧げた 気が付いてくれて嬉しいよ」
「そんな事ばかり言っていると 誤解されて今にひどい目にあうぞ」
「僕はしがなき旅の歌うたい 誰もマトモには見てくれないよ」
「そんな事は・・・・」
「いいんだ 何処の馬の骨とも知れぬ男にわざわざ魚を焼いてくれた その優しさ胸に沁みたよ 有難う」
そこに周囲の人間から声がかかった
「歌うたい いい声だ 今度は賑やかなものをヤってくれないか」
声の方へ振り向き「かしこまりました」とベルナー
賑やかに楽器をかき鳴らし始める
ーさぁ みんな 今夜は踊ろう
美しい月が出ている 星の光浴び
みんなで踊ろう しあわせな夜だから
さぁ みんな 飲んで踊ろう
月と星とが輝く夜にー
これはブロディル国も似た造りとなっている
この二つの国は同じ海に面しており互いに助け合ってきた
内陸部の奥は沙漠に隔てられさほど大きくない特殊な地域とつながっている
ある理由があって並みの人間はその特殊な地域には辿り着けない
四人の王子がレイダンド王の城に到着した日 祝いの意味で外壁の内側の前庭までは開放された
旅の疲れを取るようにとそれぞれの部屋に案内され入浴をすませ着替える
暢気者の三男リトアールの従者のゲイルドは焦っていた
「他の御兄弟方は皆様着替えを終わられております 寝てはだめです リトアール様」
「旅は疲れた」
「ああ もう!立っているだけでいいのです 椅子に座って眠りこけてもいいですから とにかくお出ましになって下さい
リトアール様は身なりをととのえられたらーそれなりの威厳もあるお方なのですから!」
「威厳はアンドール 見かけのよさはブライ(ロブレイン)に 賢さはダンスタンに任せた」
無理矢理に髪をととのえられながら 未練がましく寝台を見るリトアール
「寝ちゃダメ?」
ゲイルドは精一杯恐い顔を作る「絶対に駄目です 僕が王妃様に殺されます くれぐれもと王妃様じきじきに頼んで下さったのです
ーリトアール あのコはいいコなのだけど 少し礼儀作法やしきたりを無視していけないわ
わたくしは可愛い坊やのリトアールが落ち着く姿を見たいのよー
僕は命に代えてもリトアール様にまとまっていただきます!」
「ゲイルド たぶん母上は他の兄弟の従者にも言っていると思うよ
とにかく孫を抱きたいんだから
なんでそんなにーおばあちゃんーと呼ばれるようになりたいんだか」
ぶつぶつ言いながら どうやらみられる格好になったリトアールが部屋を出ると 兄弟達が待っていた
悪戯っぽい顔でダンスタン「さすがに寝なかったんだ」
四人の王子が大広間へ姿を現すと レイダンドの国王ディスタンと四人の姫君に紹介される
上から順番の雑な組み合わせで最初は踊ることとなった
アンドールはマルレーネの手を取る
ロブレインはエルディーヌ
リトアールはアシュレイン
ダンスタンはリザヴェートと踊る
うまくダンスまでにこぎつけて四人の王子の従者達はほっとしている
「ああしていると王子にしか見えないんだけどなあ」溜息つくゲイルド
「いやいやリトアール様はおおらかだからいいぞ」ロブレイン付きのアリストも溜息
「それぞれに苦労があるってことさ」とダンスタン付きのオライス
「でも どの方も素晴らしい方々だ お仕え甲斐がある」とアンドール付きのスタイン
あれだけ嫌がったわりには眠りもせずリトアールは優しくアシュレインの話を聞いていた
ダンスタンはいつものように如才ない
リザヴェートの言葉に ちょっと面白がるような表情を浮かべている
ロブレインとエルディーヌは何か激しい言葉の応酬をしているようだがー
一見穏やかに見えるアンドールとマルレーネのやりとりは 互いの力を見切ろうと 推し量ろうとしているようでもあった
無作法になることなくギリギリのところで
「ブロディルは美しい国だとかー」
「そう あなたの瞳のような藍色のしっとりした夜 その肌のように咲く白い花がある
一度見れば心を捕えて離さない・・・」
「夜の花は 明けて見ればかすんで褪せて見えましょう」
「賢い人だ あなたの心は言葉ではとらえられないのだろうか」
静かな微笑を返すマルレーネ
敢えて言葉は返さずに
アンドールも最初から「口説き」が成功するとは思っていない
やりとりを愉しみたい男でもあったから
そんな様子を面白そうに魔法使いは見ている
面倒だから 暫くは歌うたいのベルナーと呼んでいましょう
ベルナーは魚をくれた女官のロズモンドを捜していた
長い髪を風に揺らせ陽の匂いをさせていた娘
その自由な娘がどんな女官となっているか
彼は最初の歌はロズモンドに向かって歌うつもりでいた
ーうるわしき女性(ひと)よ・・・
緑輝く野に在りて さらに煌めき増す女性(ひと)よ
その瞳 深く我を貫き その姿 我が心を射る
さぁ僕に この僕に君を愛させておくれ
その自由な心を僕に向けておくれ
その影を崇めよう
あなたの微笑みの為に僕は死のう
だから振り向いておくれ
笑っておくれ
眩しき魂持つ女性(ひと)よ
命のありったけで僕はあなたを愛したい
どうか許しておくれ
その柔らかな唇に触れることをー
ベルナーの歌声は ロズモンドの耳に届いた
声の主の方へ ロズモンドは視線を投げる
女官姿のロズモンドが自分の姿を認め気が付いて近寄ってくると ベルナーはロズモンドに微笑みかけた
「やぁ しちめんどうな髪形似合ってるよ」
微かな戸惑いを瞳に浮かべ ロズモンドは答える
「これはー巻きつけた布でごまかしたー基本 三つ編みを繰り返して・・・たたんでいるだけだ」
人懐っこい笑みを浮かべているベルナー
初めて会った時から いつも穏やかな優しい目でロズモンドを見つめてくる
破壊力抜群の美しい容姿の自覚が無いのではーと思えてくる
若い娘には「目に毒」な男なのだった
「さっきの歌は君に捧げた 気が付いてくれて嬉しいよ」
「そんな事ばかり言っていると 誤解されて今にひどい目にあうぞ」
「僕はしがなき旅の歌うたい 誰もマトモには見てくれないよ」
「そんな事は・・・・」
「いいんだ 何処の馬の骨とも知れぬ男にわざわざ魚を焼いてくれた その優しさ胸に沁みたよ 有難う」
そこに周囲の人間から声がかかった
「歌うたい いい声だ 今度は賑やかなものをヤってくれないか」
声の方へ振り向き「かしこまりました」とベルナー
賑やかに楽器をかき鳴らし始める
ーさぁ みんな 今夜は踊ろう
美しい月が出ている 星の光浴び
みんなで踊ろう しあわせな夜だから
さぁ みんな 飲んで踊ろう
月と星とが輝く夜にー