夢見るババアの雑談室

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ほぼ身辺雑記です

塩田武士著「盤上に散る」 (講談社文庫)

2020-12-03 20:03:10 | 本と雑誌

 

 

 

「盤上のアルファ」に登場

母は出て行き 父親と二人暮らしの真田信繁だったが 父親は借金のカタで拉致され 少年の信繁の前に現れたのは

テレビドラマ「西部警察」の渡哲也演じる大門にそっくりの男 林鋭生

闇金の集金に来た男は 信繁少年と命を賭けた将棋を指す

林は「新世界の昇り龍」として知られた真剣師

子供に勝てようはずもなかった

 

だが林は 信繁少年の命などとらず 逆に食べ物を運び将棋を教えてくれた

 

「盤上のアルファ」に こんな一節がある

ー彼のノアールストーリーを詳細に紹介すれば おそらく一冊の本ができるだろう

真田と秋葉という二人の男を主人公にしたこの物語では 残念ながらこれ以上「昇り龍」の過去に触れる余裕はない

林鋭生の生きざまを語るのは またの機会に譲ろうー

 

 

その「またの機会」として書かれたのが この「盤上に散る」

 

病死した母がひそかにのこしていた手紙

遺品整理をしていて一人娘の蒼井明日香は 林鋭生という人間に心当たりがなかった

母の手紙を届けようと この林鋭生なる人物を捜し始める明日香は 同じ人物を捜すリーゼント男・上月達也と共に行動するようになる

 

前作の主人公格 記者の秋葉も プロ棋士になれた真田も登場

明日香が林を捜す道程で 「盤上のアルファ」の登場人物たちとも出会う事に

 

秋葉に片思い中らしき遊佐加織

真田と復縁した静

 

将棋ライターの関

 

どこかお人好しの秋葉は相変わらず真田に振りまわされつつ多忙な日々を送っているよう

 

明日香は一度は林と出会いつつ その時は気付けずにいた

この時 林が多弁であった理由も終盤明かされる

 

林は明日香に出会えて嬉しかったのだ

 

林が一目惚れしたのは明日香の母

けれど明日香の母には家庭があった

 

うまくいかなかった対局

勝てなかった

あの時 勝てていたら林の一生はがらりと変わっていたのかもしれない

 

ずいぶんと遠回りはしたけれど 林は少年の日の夢をかなえたのだと思う

 

泣きながら父親と将棋を指した あの少年の日

 

 

林鋭生を演じた俳優の石橋蓮司さんと著者の塩田武士さんとの対談が収録されています

 

私は石橋さんといえば横溝正史原作「悪霊島」の女装が思い出されますが

嫌な冷酷な悪役から面白いおじさままで幅広い役柄を演じられる芸達者なお方です

 

昭和時代についても対談の中で触れられておりますが

私が子供の頃には商店街の通路の端っこで 将棋で自分に勝たないかーと賭け将棋の声あげる人間なども見ることができました

 

私の父は将棋が好きな人でしたが そういう手合いには参加しませんでした

いわく「ああいうのは やくざが多い 」

最初は客をのせて勝たせて 掛け金を大きくしてーというふうなものだったのでしょうか

小説を読みながら ふっと そんな子供の頃見た光景など思い出しました

 

蒼井明日香さんはだいたい真面目な女性ですが 酒癖がユニークです

紙を破いたり いい加減な詩人(「盤上のアルファ」では女流棋士に二股かけてたようなー二人ともなんでこんな男に惚れたのかしらん・笑)が被るタイガーマスクをはぎとってみたり

そしてその行動を酔いがさめれば覚えていない