夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

「姫の宿」―3― 姫御前の思い

2007-10-26 22:14:25 | 自作の小説

香月家は 母あやかの歯科医院の収入で生活する母子家庭

山本一男は 先輩の家庭に 妻に憧れて 未だに独身

香月一郎は 父の死後 未成年ながら 家族でただ一人の男として 家族の安全を殊更気にかけている

その責任感は押さえつけるまではいかず 冗談めかした短い言葉だったが気持ちは伝わった

「さやか 危ないことは するんじゃないぞ」

さやかはにっこりした「無邪気な中学三年に何ができるっていうのよ」

「お前から無邪気って言葉を聞くと 寒気がするのは 何故なんだろうねぇ」
そう一郎は妹をからかう

遅く帰宅する母あやかの為に さやかは兄の一郎と交代で 胃にもたれない食事を作る
そして母を囲んで短い団欒を持つ

外見は元気でも夫を失った母を 兄妹は気遣っている

気丈さを保ってみせているあやかは 今回殺人事件に巻き込まれた娘さやかのことは当然 ひと息に大人になってしまった感もある 一郎の事も心配していた

あやかの兄である高崎士郎との暮らしは 何より一郎の為になるだろう

血は繋がらないが士郎の養子 亜貴欧など年上のイトコの存在は 一郎に良い意味で精神的ゆとりを与えてくれないだろうかと

その頃 すずかは 父親から情報引き出すべく あれこれ話しかけていた
「お父様 姫御前神社の姫御前って どういう方ですの」

「時の将軍 家光が姉の千姫の天寿院に預けて育ててもらった 徳川の血筋の姫らしい
嫁いで間も無く 狂乱の気味ありと幽閉され 数年で死亡した

その姫が埋蔵金に関わっていた―なる風聞もあるが 確たる証拠はない」

「お姉ちゃん 余りおかしな事はしないでね」
すずかとよく似た二つ下の妹しずかが釘をさす

名前はしずかだが口うるさい

「毎回{あの安倍すずか}の妹さん?って迷惑してるんだから

今度はお姉さん 死体まで拵えたの?
なんて聞かれたのだからね

お姉ちゃん妙なの拾うのも大概にしてよね」 とキツイ

母のちずかは 妹が言うので 余り口うるさく言わない

礼儀作法 言葉使いは時たま注意するけれど
今も夫の涼明と目を見交わして笑っている
娘と同じ聡明女学院の出身だった

聡明女学院はアルバイトは原則として禁止だが
それがおかしなものでなければ 許可していた

姫御前神社の巫女も認められているものの一つだ

髪が長かったちずかは学生時代に巫女のアルバイトを頼まれ
それが縁で後に涼明と結婚することになったのだった

賑やかな姉妹のやりとりで安倍家の夜は更けていく

藤衣なつきはインターネットで検索をかけていた

埋蔵金について

宿題のことでパソコンを使いにきた弟の賢吾は 姉のしようとしていることを知ると目を輝かせた

パソコンを得意としているのだ

姉のなつきに代わり 宿題の方の作業を終わると
調査にかかった

なつきは弟にミルクセーキを作る
いつもこれみよがしに出してあるホットプレートでパンケーキを焼いた

なつきの数少ない自分で作れるレパートリーの一つだ

ホイップした生クリームを添える

幾つかのサイトのページを賢吾は 押さえていた

「一番ひっかかるのは これなんだけどね」
「ああ ニュースを見た 大学部の少し上にあるお寺―」

風姫山にある景海寺 半年前 火事騒ぎがあり 燃えないように持ち出された寺の仏像その他の美術品や 代々の住職が残した記録や あれこれが 盗難にあったという

それからの噂話

「埋蔵金の記入あり 金儲けと売りつけた人間
信じて動いた人間がいる―」 声に出して なつきは読んだ

「穏やかじゃないよね」

姉弟は検索を続け 情報を集めた

二人は知らないが 安倍涼明がいらざる騒動が起きてはと 埋蔵金のことは口にしていないので 警察は知らない

この事だけは 子供達がリードしている

それぞれが集めた情報は次の日に学校で交換され 他の級友達も 色々耳に入ったこと
推測を言い合う

そんな時 スポーツ紙が 死体と遭遇した三人について 未成年なので実名は出さないが 誰か分かりやすい記事を書いた

その上 埋蔵金の噂についても 景海寺の盗難と結び付け触れていた

警察は犯人が犯行を目撃されていないかと娘達を襲うかもしれないことを警戒する

犯人は 下手に動くのは命とりだと思う気持ちと 見られていたらと不安な気持ちで 疑心暗鬼になっていた

毎日 殺人しているのでないから 無理もないが

「聞かれたぞ 生かして帰すな」

―頭がカッと熱くなり 刺してしまっていた

死んだと思ったのに

後で死体を捨てにいこうと―
殺人犯は頭を抱える

授業の合間の休憩時間にトイレに行こうとした藤衣なつきは異常事態に気が付いた

「何処に行かれるのでしょう?」
下級生の団体が廊下にたむろしている

「あ 君達 何?」

「わたし達 先輩を守ります
安心して下さい」

―冗談・・・だろ?―

それを聞いたさやかは大笑いをする

「笑い事じゃないぞ トイレにも行けね~」

すずかも同じ善意の攻撃にあっていた

「私達が守ってあげますからね」
こちらは上級生のお姉様達だ

「警察!頼むから!早く犯人を逮捕してくれ~~~」と なつきは吠えるのだった

「私達のなつきちゃん」部室にいても声が廊下からかかる

彼女達は包囲陣からの脱出を図った

まず足には自信のあるなつきが逃げる

体育大会ではアタランテーと呼ばれ 誰も追いつけないスピードを持つ

輪が散らばった間に さやかとすずかも 違う方向へ逃げた

落ち合う場所は姫御前神社

すずかの家と同じだから 安心だ

遅れて さやかとすずかが顔を見せると なつきがひどく大きな欠伸をした「ああ眠・・・」

残る二人は嫌な予感に囚われ 例の声が聞こえた時『やっぱり』という表情になった

「何と入りやすい体であろう
良い居心地じゃ」

「あの どうしていつも なつきの体に」すずかは自分が神社の娘なのに―と少し淋しい

「欠伸に呼ばれるのじゃ
この娘はな わらわが愛しく想うておった者の子供の頃に似ておる」

「でしたら なつきには弟がいますけど」さやかの言葉に にべもなく姫御前は答えた

「男の体に入るは気持ちが良くないのじゃ」

さやかとすずかは絶句する

「それで好きだった方は どうなられました」気を取り直して すずかが尋ねる

姫御前は暗い表情になり「死んだ」と一言

寂しげに笑って続ける「それも わらわの為なのじゃ」

ずうっと眠り続けていた姫御前が 今なつきに乗り移ってでも この世とコンタクトを取るのは 好きだった相手の面影宿す少女を守ろうと思っているのだろうか

兄 家光に頼まれたこと
島原の乱に手を焼いた将軍は 将来に備えての財宝資金を 姫御前に託した

彼女はそれを雪景新九郎に隠すよう命じた

自分が知っていては 人に洩らしてしまうかもしれない

その用心は 正しかった

姫御前が嫁いだ相手は その宝のことを知り 家臣にも唆されて 我が物にしようとした

姫御前が体は自由にされても 心は別物 明け渡さないことが 男を残酷にした

幾ら責められようとも 知らないことは答えられない

一室に閉じ込められた姫御前を救おうとして 新九郎は罠に落ち殺された

「殿が殺(あや)めた男こそ 宝の行方を知っておりましたのに」 その姫御前の言葉に狂乱 激怒した男は彼女を殺した

姫御前の不自然な死を知った家光は 姫を殺した大名を切腹させ 藩は取り潰した

秀忠は晩年 お江与の方に似た娘を愛し 子供が出来た

家光は末の妹になる赤ん坊を 天寿院の千姫に託し
天寿院は奈都姫(なつひめ)と名付け 可愛がって育てる

なつひめ なつきとも読める

更には なつきは知らぬ事だが 新九郎の子孫になる

だが それを この娘達に言ってどうなるのだろう―と 姫御前は思うのだ

思いがけず 祟り神として この世に引き止められたこの身

姫御前は 三人の上に不吉な気配を見て それを取り除いてやりたいと願っている

それに この娘達といるのが 楽しかったのだ

「眠うなったゆえ 戻るが そなた達 はよう家に戻るがよい
くれぐれも・・・気をつけるのじゃぞ」

欠伸一つ 姫御前は消え なつきが戻る


チキンライスとサラダ

2007-10-26 16:26:03 | 子供のこと身辺雑記

チキンライスとサラダ
チキンライスとサラダ
茹でた春雨 人参 卵焼き ハムに胡瓜を 甘酢で和えて すりゴマをふりかけてます

チキンライスは 後で卵焼いてオムライスにする予定

ケチャップ味を私が食べたい
ただそれだけで 作っています
家族の気持ちは どうでもいいんだろうか(笑)


藤沢周平著「天保悪党伝」新潮文庫

2007-10-26 15:58:51 | 本と雑誌

藤沢周平著「天保悪党伝」新潮文庫
藤沢周平著「天保悪党伝」新潮文庫
「蚊喰鳥―天保六花撰ノ内・直侍」
河内山宗俊の子分的存在としての印象ある片岡直次郎

吉原は三千歳花魁という馴染みに会いに行くにも金がいり その癖博打好き遊び好きだからいつもぴーぴー言っている
金欲しさに河内山の悪事を手伝うことになる
更には三千歳を足抜けさせ その後始末に河内山が一肌脱いでくれるが 森田屋なる正体不明の男が出てくる

―どうなるかねぇ
空を見上げる直侍

「闇のつぶて ―天保六花撰ノ内・金子市」 三千歳の新しい男 金子市之丞
彼はさびれた道場主
女に会う金の為 辻斬りまでしている

それを知られ手を貸した仕事で 底知れぬ森田屋に出会う

「赤い狐 ―天保六花撰ノ内・森田屋」

父を殺し一家を追った藩への仕返し
その仕掛け

悪党にも意地はあるのだった

三千歳の上客でもある森田屋

万事手配り済ませたはずであったが

「泣き虫小僧 ―天保六花撰ノ内・くらやみの丑松」
河内山の世話で 花垣で働き始めた丑松は おかみに付き纏う悪党の存在に気付く
おかみが自害した仕返しを金子市の力を借り果たした

悪党でも何処かに綺麗な心を持っている

「三千歳たそがれ ―天保六花撰ノ内・三千歳」
今迄散々だった直侍が最後の最後に ちょいいい役で出てきます

先行き考えて不安になる三千歳
惚れた金子市が江戸を離れることになり 河内山からの頼みを聞いて 金を作る

惚れた男は もう江戸にいない
寂しさ噛み締める三千歳

「おれも悪なら、金子市も悪。おれたちはそのようにしか生きられねえのだ。 おめえがいちいち気に病むのはよしな。いいか」

後ろ姿へかけてくれた直侍の声が言葉が 温かい

勝手な男ではあるが 直侍の三千歳に惚れてる気持ちに嘘はないのだ

ただ男のだらしなさ甲斐性なさに三千歳の気持ちが離れただけで

「悪党の秋 ―天保六花撰ノ内・河内山宗俊」
強請りたかりで名を馳せた河内山も年貢のおさめ時

大きな仕事が命とりになる

江戸を離れた森田屋は自分のとばっちりで死んだ男の女房がタチのよくない女げんにつかまっているのを命がけで救おうとする
危ない場で助けたのは 江戸を売ったはずの金子市

逃げた先も危なくなり また江戸に戻ってきていたのだ

物語は河内山が捕らえられるであろうことを暗示して終わる

再読です
好きな話です

河内山宗俊と言えば 私の中では どちらも故人ですが 若山富三郎さん 勝 新太郎 さんの 兄弟が いずれもイメージです

若山さんは確か舞台でこの役で トンボをきっておられたような記憶があります

柴田錬三郎さん原作で市川雷蔵さんが眠狂四郎演じる大映映画では 唐人役が印象深いです

漫画では大和和紀さんが 楽しい作品を 昔描いておられます


お友達に感謝♪

2007-10-26 11:05:32 | 子供のこと身辺雑記

お友達に感謝♪
お友達に感謝♪
お友達に感謝♪
四国土産をネットのお友達が わざわざ送ってくれました

だから今日のお昼は おうどん茹でてキツネうどんに
それと戴いたしょうゆ豆

おうどんはまだあるので ざるうどんや鍋に入れてもいいかなって あれこれ楽しみながら考えています

あっりがと~~~
早速ブログネタにも使わさせていただきます(^^)


「姫の宿」―2―姫御前欠伸する

2007-10-25 22:25:49 | 自作の小説

「何つくり声出しているのよ なつき 」

さやかとは逆に とぼけた反応をするのがすずか
「そんな芸を お持ちとは」

「なつきとは この体のことかえ」
尋ねる表情も声も別人のものだ
なつきであって なつきでない

「『ガラスの仮面』の北島マヤじゃない身のなつきには こういえゲイは無理だと思うぞ」と さやかが言えば すずかも頷く

「ふむ・・・わらわもかような事ができるとは 今迄知らなんだ」

「で そういうあなたは どちら様?」早くも立ち直ったさやかが訊く

命短し こけるな乙女

「姫御前―で良いではないか 寝過ぎて昔の事は忘れた
この者の欠伸に わらわは惹かれたのじゃ
なんとも気持ちの良い欠伸であったゆえ」

「欠伸惚れ―とは珍しや

この神社の姫御前様は恐ろしき祟り神
亡くなられた後 天変地異が続いて
その鎮魂の為に建立されたと聞いております」

「ほ・・・詳しいこと
あれは殿が小心者でな
だいそれた事を企む割りには 情けない気の毒な人であったわ
たまたま台風やら地震やら 落雷 大火 続いたもので わらわの祟り―ということにしおってな
何百年も わらわは祟り神にされてしまった
迷惑しておる」
その割りには楽しげに「ほほ・・・」と笑った

安倍すずかは もう一つ つっこむ
「埋蔵金について 何かございませんか」

「昔のことじゃ 覚えておらぬ
わらわは 眠うなったわ」
欠伸一つ

すずかとさやかは 入れ替わりを目撃する

「ふぁ・ ・・」河馬も飲み込めそうな大口開けて欠伸をしたなつきは 友人達の自分への異様な注目ぶりにきょとんとする
「どうしたさ~」

さやかとすずかは目を見交わし『さっきのは わたし達 夢を見たのよ きっと そうよ』無言で そんな会話をした

娘達が そんなドタバタで遊んでいる頃
警察は真面目にお仕事していた

地道にコツコツ色々調べている
ほぼ死体に遭遇した三人娘達とその家族 人間関係
付近に勤務する人間達
学生達も例外ではない
殺された男―被害者の周囲は当然のこと

更には貴恋山へ出入りしていた人間もチェックしなくてはいけない

一見優男 貴公子然とした雅 京四郎と 人当たりがソフトな山本一男は 聡明女学院に 最近結婚したばかりの三船歳雄32才と 一つ下の雅をライバル視している体育会系 津田政彦は隣りの男子校 清心学院へ 話を聞きに行っていた

「なんで俺達が男子校で 山本さん達が女子校なんすかね」
タワシ頭と言われるピンピンつったった髪 きついまなざし
気の弱い子供なら 目が合っただけで泣き出しそうな外見だ

黒いサングラスかければヤクザさんでも通るだろう

結婚するまでは署内で婦警に一番人気だった三船は「適材適所さ」と笑う

名前の歳雄からトシさんと呼ばれている

津田はやはり政彦からマサ
あだ名も み昔前のヤクザ映画の登場人物のようだ

「差別っすよ 雅が女子校で」と津田はしつこく拘っている

「男より女が怖いんだぞ 団体になると
女子校の教師になった友人は 新米時代 ハゲが出来たのや ノイローゼになったのがいる」

清心学院には中等部一年に藤衣なつきの弟 賢吾が 高等部三年に香月さやかの兄一郎がいた

三年前 父親の周一が捜査中に背中から撃たれて死んだ時 今のさやかと同じ中学三年
大人びた秀麗な顔に強い視線
葬儀の時に一郎は泣いていなかった

弔問に来る客の中に犯人を捜すような・・・刑事の眼をしていた

残念ながら香月周一を殺した犯人は逮捕されていない

一郎は来年東大を受験し 合格すれば警視庁にいる伯父の家で暮らすらしい

歯科医を継いでるあやかは夫が死んでも生活に困っていなかった

三年前はいなかった津田に 三船は説明してやる

事前に連絡していた為か 学院の応接室へ まずは一郎がすぐに現れた

185センチある雅とさほど変わらぬ長身 美貌の母親の面影宿す顔立ちながら いかにも賢そうな落着いた物腰

「三船さん お久し振りです その節は色々お世話になりました 」
津田の方を向き「はじめまして 僕が香月一郎です
このたびは妹がお世話をかけております」
「は・・・はあ」津田の方が押される感じとなった

話が終わり 部屋を出て行く時の挨拶もソツがない

津田は かなり年下の学生に威圧感を覚えていた

次は藤衣なつきの弟 賢吾

こちらも優しい顔して一種の天才らしい
得意なのは理数系だが 平均点が毎回98前後なのだ―と言う

姉との日常 不審人物を見なかったかの質問にハキハキと答えた
「君は将来 何になるか決めているのかな」雑談めいた三船の質問に笑顔で答える
そう言えば賢吾はずっと爽やかな笑顔でいた
「医者になりたいと思っています」

迷いのないしっかりした答えだった

「小学校の校舎の窓ガラス割りに行く連中もいれば なんなんですかね」

「家庭がいいんだろうな
その子にあった育て方をしているんだろう」

「その子にあった?」

「一人ひとり子供は違うぞ 同じきょうだいでも
親の勝手で個性を殺されたら 子供は腐る
学校で荒れる

よく何かあったら 教師や学校のせいにされてるが
基本は家庭だ
家族の中で対話があれば 結果が違うことも多いんじゃないかと思うのさ

この学校もいいんだろうな

どの生徒も表情が明るい
のびのびした顔をしている」

独り者の津田には まだまだピンと来ない話だった

その後は教師達にも「おそうじおじさん」について何か知らないか 変わったこと 目についたことはなかったか
色々尋ねる

教師達は手回し良く生徒達にもプリントを配布し質問してくれていた

刑事達の一日は長い

貴恋山の植物を研究している聡明女学院の教師 小野健三が 市会議員の西山徹也を見たと言う

数人で歩いていたと

一方 被害者の高木光男は 独り暮らしだった

「生きている間に何かを残せればいいな」そうも言っていたのだと
体を壊すまでは いい教師だったらしい

完全な体調でなくては生徒にも学校にも迷惑をかける―と退職したらしい

「若い頃から入院退院を繰り返したお母さんがおられて
嫁さん貰っても苦労させるだけ
で独身を通し お母様の葬儀を無事終えて疲れが溜まっていたんでしょう
倒れて入院

やっと元気になってこられたようだったのに
何の為の人生だったんでしょう

お気の毒に」

これが近所の評判であった

殺されそうな話は出て来ない

通り魔の犯行だろうか

これといった容疑者は 浮かんでこなかった

市会議員の西山は視察だと答えた
学校も多い地域だけに安全性を調査に行ったと
「何事も自分の目で確認する―主義だ」

同行したのは秘書の木村

偶然 中松不動産の社長に会って少し話したのだとか

中松不動産社長の中田松蔵は 高い場所から街を見下ろし仕事の閃きを得るのだと言う

幾らかの疑問 ひっかかりはあるにせよ

出口を刑事達は見つけられずにいた

被害者 高木光男はたまたま不幸な場所にいたのか

単純な殺人事件だ

犯人はいるはずなのだ


平岩弓枝著「千姫様」角川文庫

2007-10-25 11:34:40 | 本と雑誌

平岩弓枝著「千姫様」角川文庫
平岩弓枝著「千姫様」角川文庫
この作品は平成二年九月に単行本として刊行されたとか
十七年前に書かれたことになります

著者は「御宿かわせみ」シリーズが余りに有名
幾度も繰り返しドラマ化されています

テレビドラマでも平岩弓枝シリーズなど一時代をはくしました

息の長い作家です

七歳で豊臣秀頼に嫁ぎ 大坂城落城後は 誰しもが似合いと言った相手と姫路城で暮らし 夫の死後は 弟家光の暮らす江戸へ
出家して天寿院になる
七十歳で亡くなるまで 実に四十年の未亡人暮らし

虚実を取り混ぜ亡くなるまでの物語

未亡人になってからは 殆ど歴史の表舞台に出ることは無かった女性―
その人生前半で余りに多くの死を見て
それでも彼女が真実 本多忠刻を愛していたのであれば
女として幸福な人生ではなかったか とも思う

また逆に以後の人生が必要以上に長く感じられはしなかったかと


「姫の宿」―1―姫御前との遭遇

2007-10-24 22:38:34 | 自作の小説

市街地にしては閑静な場所に聡明女学院は位置する
駅からの大通りより やや北東に貴恋山(きれんさん)があり その中腹に姫御前神社 足元に聡明女学院があるのだった

中等部と高等部 六学年

余程アホでない限りエレベーター式で行ける大学はバス停で三つ先の風姫山(ふうきさん―とも かぜひめやま ―とも呼ばれる)の麓にある

かつては大和(やまと)女学園と並び 名門女子校 お嬢さん学校として名を馳せたものだ

いや・・・現在も多分そうなのだろうが 案外在校生達は そういうふうに見られていると聞いたら「げ・・・」と言うかもしれない
そんな生徒がいる
勿論例外かもしれない そうであってほしい

嫌いな科目は無視し好きな科目なら授業した教師の言葉 授業中に何があったかまで覚えている・・・偏った記憶力の持ち主がいる

何故か下級生から上級生まで人気があり バレンタイン・デ―のチョコレートは毎年増える一方
学園祭前には アニメキャラクターのコスプレに参加を求められ 上級生から強引にさらわれそうになったこともあるらしい

藤衣(ふじい)なつきと言う
少年めいた外見の凛々しい感じの女の子だ
写真部に所属している

その友人で上級生から{聡明のクレオパトラ}と呼ばれるのが 香月(こうづき)さやか
東大を目指す才色兼備 なよっとせず きりりとした美貌だ

文芸部に所属する

姫御前神社の神主の娘 安倍すずか

おっとりとした美少女
美術部に所属する

三年間 中等部で同じクラス

名前が皆平仮名なので相性が良いのか クラブは違うのに仲がよい
たいてい三人つるんでいる

目立つ三人なのだった
事件起きれば 真ン中にいる事も多いので 担任泣かせでもある

その日 自主的な部活動で なつきはデジタル一眼レフ
さやかはメモ帳
すずかはスケッチブック持ち 貴恋山にいた
それぞれ クラブの為の作品づくりの行動であったのだ

三人の共通点としては 漫画と本好きであろうか

好きな分野は異なるが
あと三人とも「踊る大捜査線」のファンなのだ

三人は決して事件を呼んでいるわけではない
しかし・・・事件が寄ってくるのかも・・・しれない

カメラを構えていた藤衣なつきは 何かの気配に つい習慣で蹴飛ばしてしまった

と男がドサリと倒れる
痴漢か?と思ったなつきだが よく見れば男の服は血に染まっていた
「おい あんた大丈夫か?」助け起こすと男は「女が・・・」と言って息絶えた

作業服 多分中年

「何か声しましたけど大丈夫ですの」絵筆持ったまま 安倍すずかが現われた
黒目がちの目が愛らしい
長い髪は校則で三つ編みにしてあった

「ほぼ死体が確実死体になった」と答えるなつき

遅れて 香月さやかが姿を見せる
「死体って穏やかじゃない言葉が聞こえたぞ」

「女―って言い残して死んだんだ」と答えるなつき

さやかは眉を上げた「ダイイング・メッセージが女? なつき胸触られたの」

「なっ・・・なんで そうなる」この~って表情になるなつき

彼女には制服を着ていて 子供から「有難う おにいちゃん」と言われ 私服で女子トイレに入ろうとして不審人物に見られた―また「男子トイレはあっちよ」と注意された前科がある

二人を押さえてすずかが言う「まぁまぁ 漫才してないで ここは警察ですわ」

名前 住所 身分 電話番号
繰り返し聞かれた後 すぐにサイレンの音が聞こえてくる

それもそのはず 警察署は聡明女学院の南向かい側で 消防署も二つ北向こうの交差点にある

香月さやかの父親は殉職していて その近くの警察署の捜査一課にいた

で顔見知りの山本一男が 背の高い若い男と 制服警官達と共に現われた

さやかはぺこりと頭を下げる

さやかの友人という事で 山本はなつきとすずかの事も知っていた
だから駆け付けてきてくれたのかもしれない
身分証明の写真をドラマのように律義に若い男は見せた
それによると名前は雅(みやび)京四郎

三人の生徒手帳で確認し 死体になった男と遭遇した様子と事情を ひどく生真面目に質問している

山本は雅に任せていた
そうこうしているうちに 三人の担任 長崎薫と学年主任 大島千恵子が現れた

生徒よりも初々しい雰囲気を漂わせ 壺井栄の小説「二十四の瞳」からとり 大石先生と陰で呼ばれている

大島先生は長崎先生より僅かに背が高い
いつもてきぱきした感じで歩いている

三年間 三人の担任している長崎先生も学年主任の大島先生も大変だ

「怪我はありませんでしたか あなた達」これは長崎先生

挨拶と紹介が済んだ頃 鑑識も検死もほぼ仕事が済み 死体に見覚えないか確認するように言われた

すずかは首をかしげ 思い当たる事がありそな雰囲気

先に大島先生が言った「おそうじおじさんですわ 貴恋山を散歩がてら掃除していて 名物おじさんとしてタウン紙の取材受けた記事を読んだ事があります」

「父と話しているのを見たことがあります」と すずかも言った

すずかの父が神主な姫御前神社は近いので 警官が呼びに言った

程なく現れた痩せて背の高い男が すずかの父の涼明だった

「高木光男さんです 病気で入院して退院後リハビリかねて散歩を始め ついでにゴミ拾いもしてくれて
以前の職業柄 辺りの歴史についても話し込んでいくことも多かったですね
ああ彼 歴史を教えていたんです
わたしとは地元の中学の同級生でした」

あっさりと死体の身元は判り 涼明に住所も教えてもらい 確認の手配がされた

念の為 それぞれのアリバイが質問される
書類作るのに警察署へ行くことになった
「パトカーの中って こんなふうなんだ」
キラキラした目で なつきは見回している
山本はニコニコし 雅は呆れていた

殺人事件に遭遇したのに何なんだ こいつらは―と 思っているのである

古今のミステリー作品読破に燃えるさやか
ホラー オカルト 怪談 恐怖小説 そういう類いの映画
失神者続出という恐い映画も つっこみどころ捜して大笑いしながら見るなつき

父の仕事の関係か醒めた神経持つすずか

三人娘は 少しだけ普通じゃないかもしれない

調書へのサインも終えて出てきた娘達をそれぞれの家族が迎えた
すらりと背が高く宝塚の男役めいた雰囲気があるのが さやかの母 香月あやか 親の代からの歯科医

背は変わらないが 丸みを帯びた体つきなのが なつきの母 みづき

すずかは涼明がそのまま待っていた

翌日 三人は塀を境に隣接する男子校の校舎を眺めながら 彼女達の穴場的場所で 事件について話し合い 学校ではゆっくり落ち着いて話せないということで 放課後

姫御前神社に集まる事にした

姫を祭った建物横のでっぱりが ベンチ代わりに丁度良いのだ

掃除は省エネ(つまりは手抜き)で済ませ 下駄箱ダッシュ

建物横に落着くと すずかが爆弾発言をした「この山の何処かに埋蔵金があるのですって」

「舞い雑巾 それは器用な」と真面目にボケるなつき

なつきのボケを冷たく黙殺し さやかが尋ねる「殺された人は 散歩がてら掃除して埋蔵金も捜していたと?」

「相談受けて父も 残る古い記録など ひっくり返して探したけれど 場所を書き記したものは無かったって

埋蔵金はマニアになると かなり熱くなるらしくて
父はそのあたりの事を心配していたわ」
眉を寄せてすずかが答える

「古い記録なら 案外お寺なんかにあるもんだけど」さやかは 何やら考える様子

なつきは関係なく「はら減った」と呟く 「埋蔵金なんて どうでもいいさ~ 」

自分達で犯人が見つけられるなんて思い上がってはいない
ただ何かしないと 死んだ男の死に顔に捕まり そこで止まってしまいそうな三人娘なのだった

あ~あ と 欠伸した なつきの動きが止まった

なつきとは違う声が話し出す

「やれ うるさや まだ埋蔵金など とり騒いでおるのかや」


森 薫 作 「エマ」6 7 8巻 株式会社エンターブレインコミック編集部

2007-10-24 20:41:21 | 本と雑誌

森 薫 作 「エマ」6 7 8巻  株式会社エンターブレインコミック編集部
森 薫 作 「エマ」6 7 8巻  株式会社エンターブレインコミック編集部
森 薫 作 「エマ」6 7 8巻  株式会社エンターブレインコミック編集部
英国を舞台にメイドのエマの恋が身分違いという障害を越えて叶うまでが6・7 巻
8巻から先は周囲の人間を描いた外伝になります

悪い意味で貴族らしい貴族―自分は何しても構わない 家族でさえ自分の邪魔をしてはいけない
自分より身分の低い者に存在価値はない― である子爵の悪役ぶりが 大きな障害として物語を盛り上げてくれます

フライパンで十回ばかし力一杯殴って 蹴飛ばし 思い切り踏んづけてやらにゃあ!と思うよな イヤミなオッサンです

8巻でのケリーさんの短い結婚生活での楽しい思い出

ふられたエレノアが立ち直るまでの物語

いずれも作者が好きで描いているのだな―と読んでいて感じる作品ばかりです

ここからは余談です(笑)

大手前公園近くに他の書店では置いてないようなオタク系のコミックス マイナー系の雑誌でも 昔から置いてある本屋さんがあります

「エマ」を他で捜しても無かったので 今日 仕事の研修会が早めに終わったのを良いことに行ってきました

願いは叶い 置いてありました

さすがは黒○書店♪
願わくば いつまでも潰れないで営業して下さい!


朝からカレーになりました

2007-10-24 09:54:44 | 子供のこと身辺雑記

朝からカレーになりました
午後から夕方まで仕事の外せない研修会があって 夕食用のカレーも朝から作ったのですが
父に「何食べる?」と尋ねたら「カレーがいい」と

朝用おかずも作っていたのだけど

父は食欲無い時でも カレーライスなら食べられる人

一日カレーになっちゃうけど どうしよ^^;

おやつ代わりの煮豆(金時豆を圧力鍋で煮ました)も ついでおこうかな

さあて何を作りましょ


澤田ふじ子著「大蛇(おろち)の橋」 幻冬舎文庫

2007-10-23 00:16:18 | 本と雑誌

澤田ふじ子著「大蛇(おろち)の橋」 幻冬舎文庫
澤田ふじ子著「大蛇(おろち)の橋」 幻冬舎文庫
剣の道ならず能も人より優れ 師から可愛がられ 殿の覚えもめでたい男

美しい想い合う恋人もいて

しかし彼を妬んだ男達の為 能の師は切腹して果て 恋人八重はさらわれ 閉じ込められ 連日 輪姦された挙句に 絞殺され その死体はゴミでも投げるように捨てられた

今迄むしろおっとりと生きてきた市郎助は 復讐を誓う

彼の復讐は 見事 果たされるのか

あくどい 我が儘バカ男
力も無く努力もせず やっかむだけの卑怯者
そんな人間に人生狂わされ 泣き寝入りする人間は 今も多い

返り討ちになる者も

敵討ちは野蛮とはいうけれど

人を殺しても数年辛抱すれば また出てこられる―と嘯く反省しない人殺し(被告人)など 見ると
命には命で贖う

それが びしっと行われなければ 世から善悪失われることもあるのでは―と思う


ちょっと笑えた会話

2007-10-22 18:01:19 | 子供のこと身辺雑記

ちょっと笑えた会話
ちょっと笑えた会話
ちょっと笑えた会話
ちょっと笑えた会話
ちょっと笑えた会話
娘にハンバーグついで長男が来たので「今日のおかず 見本」と 私が言った

と娘 おかずを覗こうとする長男の視線から隠して 「見るんだったら 見物料 千円」と言った

「そう きたか」という顔になる長男
しかし返しのつっこみもボケも無かった

母はちょっと寂しいゾ(笑)

写真は庭からとってきた柚子

それと そろそろお姉ちゃん帰る時間と 二階から降りてきて 人待ち顔の可奈
後ろ姿だけど^^;


蓮根バーグ

2007-10-22 16:14:23 | 食・レシピ

蓮根バーグ
蓮根バーグ
蓮根バーグ
蓮根バーグ
蓮根バーグ
前はナマの蓮根をすりおろして鶏ミンチと合わせてハンバーグにしたのですが
今回は少し作り方を変えてみました

まず蓮根は穴のお掃除を割り箸でします

皮をむいてみじん切りにした蓮根を茹でて下さい
圧力鍋を使うと早いかも

玉葱 ニンニクみじん切りして炒めます
水気切った蓮根もご一緒に
パックの鰹節 酒 味醂 醤油で下味をつけます
これなら食べられると思ったら (なんていい加減なんだ!笑)
ボールに取り上げ冷まします (A) 耳を切った食パンを小さく切ります

合挽きミンチ 冷めたA 食パン 生卵 頑張って混ぜます

挽き肉の色が変わり もちもちっとしてきたら 掌にサラダオイル塗ってまとめます

鰹節などで和風のだしをとっておきます

ハンバーグの両面に焦げ目つけたら 味付けした汁(和風だし 砂糖少量 醤油 かな?)で 少し煮て味をふくませます

最後 軽く水とき片栗粉で ごくごく薄くとろみをつければ 出来上がり
柚子かすだちの皮など 盛り付ける時にのっけると綺麗です

更にバリエーションとして 同じ材料に 茹でて潰した(ええ思いっきり潰しちゃって下さい ストレス解消に おススメです)じゃがいもか薩摩芋を加えてまとめます
フライの衣つければ コロッケに


北森鴻著「パンドラ′sボックス」光文社文庫

2007-10-22 15:31:12 | 本と雑誌

北森鴻著「パンドラ′sボックス」光文社文庫
北森鴻著「パンドラ′sボックス」光文社文庫
作者口上に始まり 短編をはさみ 作者のエッセイが入る

ラストは 怪説と銘打って 裏京都シリーズで楽しいイラストを書いてくれてる はざま隆治氏の四コマ漫画による収録作品楽屋落ち話

「仮面の遺書」 「本格推理」に収録されてる作品
燃えて死んだ男 彼は自殺と見られていたが
ある男が自殺といわれる その死の謎をときかける
話を聞いていた女性は―

仮面の―とくると どうしても三島由紀夫氏の「仮面の告白」を思いだしてしまいます

私が興味あるのは この物語が終わった後 犯人がどうしたか どうなったか―だったりします

案外 皮肉な結末が似合いそうな気がするのです

「踊る警官」関西弁の刑事の喋りで物語が進行します
ひとひねり ふたひねり
別な本当の{事件}が浮かび上がるという趣向です

「無残絵の男」明治維新間もない頃 起きた人殺し
謎が解け 最後の台詞に作者の茶目っ気を感じます

「ちあき電脳探てい社」幽霊を見たという

ぼ ぼくらは少年探偵団~♪と歌い出したくなるよな物語

「鬼子母神の選択肢」裏京都シリーズの面々が活躍致します

かつて泥棒
今は改心した?貧乏寺の寺男

松茸騒動の陰で意図されたこととは?

「ランチタイムの小悪魔」悪い事が起きる前は 爪がいたむ(割れたり折れたり)女性がいる
昼食後に倒れた他の女子社員

何故かヒロインが 毒を持ったのだという噂が流れていた

「幇間二人羽織」久生十蘭の顎十郎モノのパスティーシュ作品なのだそうです

一人の人間が同日同時刻に他の場所にいることができるのか

その謎に隠された事件読み解く顎十郎

なつかしいつくりの小説です

昔 春陽文庫の時代小説は角田喜久男先生など こんな各章見出しつきの作品が多かったです

北森鴻というパンドラの箱
底には何が残っているのでしょう

狐と呼ばれる美人骨董屋シリーズ そのシリーズとリンクすることもある那智と助手のやや暗めの怪奇色漂う事件が多い作品群

九州は博多を舞台に友情が痛く切ない「親不幸通り」モノ

安楽椅子探偵の変形 香菜里屋シリーズ

裏京都シリーズ

軽いものから重たいものまで

次は何を書いてくれるのだろうと 楽しみな作家さんの一人です
あ いったん買い損ねると書店では 見つけにくい作家さんでもあります

本書中に「売れなかった」とあるのですが 「買えなかった」こともあるのだと 読者の立場から^^;