NHKには12人で構成する経営委員会が有り、経営委員会が会長を任命し、会長の下には企業の取締役に相当する10人の理事がいる。安倍首相は昨年秋、経営委員会に4名を送り込んでいるので籾井会長は事実上、安倍首相が任命したと言っても過言ではない。
その、籾井会長が1月25日の就任初日、10人の理事全員に辞表を提出させていたことが2月25日に判明し、昨日の予算委員会では「こういうことは一般社会ではよくある事」と発言した。
一般社会でよくあるかどうかは、それこそ一般のサラリーマンでも分かることで、この発言は尋常ではない。27日の予算委員会で民主党の篠原孝議員が言っていたように「理事に辞職書を出させるのではなく、逆に会長が自ら辞職書を懐にNHKの公正さを保つべく努力すべき」である。
彼のかつての三井物産の上司は、「上から右向けと言われれば一晩でも右を向いているような男で、部下にも絶対服従を求めた」と言っている。ヒットラーのようなものか。
この問題はかなり深刻だ。事が国営放送に等しいNHKの事であり、籾井会長の剛腕で公正性が失われる可能性を生じた。私は、NHKの勇気ある報道は評価している。例えば広島に投下した原爆や先の大戦に関し隠されていた事実の解明などである。
アメリカは原爆の威力を知るための子供の死亡率曲線が欲しかったこと、およびジョセフ・グルーのポツダム宣言原案では天皇の地位を保障していたが、国務長官ジェームズ・F・バーンズが削除し原爆投下へ導いた事(日本の降伏を難しくした)を明らかにしている。
元国連高等弁務官の緒方貞子の、日本軍トップの腐敗・汚職が戦線拡大を引き起こし、日本軍は戦線を拡大しすぎ、物質の補給も出来なかったとの指摘は興味深かった。
緒方貞子は言っている。「日本軍は乱脈を極めた」これで多くの軍人だけでなく、子供など多くの命が失われたのだからたまったものではない。
NHKが事実を報道しなくなることは、国民が知り得る権利を失うだけでなく、日本を衰退に導くであろう。海外も注意深く見守っている。安倍首相が籾井会長の発言を批判しない事を問題視している。
現状のままで籾井会長の暴走が続けば辞職は免れないように思える。然し、逆に、むしろ猫を被って、音無しを決め、NHKから事実の報道を無くすことの方が恐ろしい。