【社説】:震災8年・風評との闘い/福島の今を来て見てほしい
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:震災8年・風評との闘い/福島の今を来て見てほしい
「風評を取り除くためには、福島に来てもらうことが、一番効果がある」。香港でのトップセールスから帰国した内堀雅雄知事は1月下旬の定例会見で、風評払拭(ふっしょく)に向けて、福島の今を知ってもらうことの大切さを強調した。
観光庁が先月末に発表した2018年の宿泊旅行統計によると、国内のホテルや旅館に泊まった外国人の延べ人数は、前年比11%増の推計8859万人(速報値)で、過去最多を更新した。
本県は15万2750人で前年に比べて17%増えたが、全国トップの伸び率を示した青森県の37万9280人(46%増)や、宮城県の38万3770人(45%増)に比べると精彩を欠く。37%増の山形県、30%増の岩手県にも及ばない。
ただ、東北各県も伸びが著しいとはいえ、6県を足し合わせても全国に占める割合は1.6%にすぎず、外国人旅行者の誘客は東北全体で底上げを図らなければならない課題だ。
本県はその中でも誘客に後れを取っている状況を分析し、わずか0.17%という全国に占める本県の割合を着実に増やす有効策を打ち出していく必要がある。
観光庁は結果について「全国的に、地方空港への国際便就航が伸び率上昇に大きく寄与する傾向がある」としている。東北の中で最も宿泊者が多い宮城県をみても、台湾便の増加に加え、仙台市を拠点に東北を巡る旅行者が増えたことが要因の一つとなっている。
福島空港は、東日本大震災と原発事故後、国際定期路線の休止が続くが、チャーター便は本年度、前年度に比べて倍増となる好調さだ。4月からは台湾の航空会社が定期チャーター便の通年運航をスタートさせる。まずはチャーター便をうまく活用しながら、県内外で広域周遊コースを設定するなど工夫を凝らし、県内を訪れる旅行者を増やすことが重要だ。
呼び込むべき旅行者は外国人だけではない。県内の日本人宿泊者は1079万5820人で、外国人を合わせた宿泊者数は全国で13番目に多い。統計には旅行者だけでなく、ビジネス客なども含まれるが、大勢の人々が本県に足を運んでいることを再認識し、もてなしに力を入れなければならない。
震災と原発事故から丸8年がたとうとしている。原発事故の風評は根強く、県産品についてはいまだに24の国や地域が輸入規制を続け、国内でも価格低迷などの影響が残る。福島に「来て」「見て」「食べて」「泊まって」もらう観光をけん引役に相乗効果を生み出し、風評を消し去っていきたい。
元稿:福島民友新聞社 朝刊 ニュースセレクト 社説・解説・コラム 【社説】 2019年03月07日 08:47:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。