【主張①・11.20】:セブン非上場化案 価値向上に資する改革を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張①・11.20】:セブン非上場化案 価値向上に資する改革を
セブン&アイ・ホールディングスが、創業家側から買収提案を受け、社外取締役からなる特別委員会で検討していることが明らかになった。
具体的な提案内容は分かっていないが、セブン&アイは「法的拘束力のない非公表の提案」としている。
セブン―イレブンの看板=東京都内
9兆円規模の巨額資金が必要ともされるが、買収が実現すればセブン&アイは非上場となる。セブン&アイはカナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けており、事実上の対抗策といっていい。
セブン&アイは、創業家からの買収提案について、特別委員会で「慎重かつ包括的な検討を行っている」としている。クシュタールからの買収提案や、セブン&アイ単独の経営改革策を含め詳細に比較検討したうえで、企業価値向上に資する改革案を採用すべきだ。
一方で、経営改革は株主だけのために行うものではない。稼ぐ力を高めることは当然だが、株主以外の利益も含め総合的に判断することが欠かせない。
コンビニチェーン「セブン―イレブン・ジャパン」を運営するセブン&アイは、公共料金の収納代行やATM(現金自動預払機)設置など新サービスを先導してきた。コンビニはモノを売る小売店としてだけでなく、社会インフラとして欠かせない存在になっている。
業績向上のための合理化の名のもとに、こうした機能が損なわれるようなことになれば意味がない。企業価値向上には、より充実したサービスを提供する方向が求められる。
コンビニのフランチャイズ店のオーナーや、そこで働く従業員ら多くの関係者への影響も考慮されるべきだ。
セブン&アイはスーパー事業の不振が続き、海外の物言う株主(アクティビスト)から構造改革を迫られてきた。10月には、稼ぎ頭のコンビニ事業に専念する体制に再編し、傘下のスーパーや外食事業は中間持ち株会社を設立して分離する経営戦略を発表したが、市場の評価が高まったとは言い難い。
求められるのは、顧客を含め多くの関係者がメリットを実感できる企業価値向上策である。そのことを基準に買収提案の諾否を判断し、経営改革につなげてほしい。
元稿:産経新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】 2024年11月20日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。