【社説②・11.27】:医師の偏在解消 地域医療守る最善策を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・11.27】:医師の偏在解消 地域医療守る最善策を
医師が地方や特定の診療科で不足する偏在の解消に向け、政府は年内に対策をまとめる。
厚生労働省が今月、その案を示した。医師が少ない地域を選定して支援を強化し、医師の適正な配置を促すため規制色の強い施策も盛り込んだ。
偏在は長年の課題で、国や自治体は大学の医学部に地域枠を設けるなどの誘導策を進めてきた。だが医師の働き方改革などで事態は厳しさを増している。
どこに住んでいても必要な医療が確実に受けられることが、暮らしの安心に欠かせない。
規制は職業選択の自由に抵触しかねない。医療関係者と十分な協議を行い、理解を得ながら最善策を探ってもらいたい。
厚労省は対策案で、医療機関の減少地域を100カ所程度選び、診療所の開業費用の補助や医師の手当増額を行うとした。
一方、医師多数地域で診療所を開く場合、夜間診療など地域で不足する機能を担うよう都道府県が要請する制度も掲げた。従わない場合は勧告や公表ができ、保険医療機関としての指定期間の短縮も可能とする。
加えて医師少数地域の勤務経験がないと院長などの管理者になれない病院を増やし、勤務期間を延ばす方針も掲げた。
また財務省も医療過剰な地域での診療報酬減額案を示した。いずれも都市部などへの開業抑制を狙う強い措置と言える。
医師の養成経費や報酬は税金や保険料などが原資である。地域格差が生じないよう、公共インフラとして医療資源を整備していくことが求められる。
地方で必要な医療を受けられず、都市部に通院する住民も多い。規制に頼るだけでなく、地域医療の現場で働く意義を伝え、意欲を持ってもらう医師を増やすことが肝要だ。
対策は急務だが、今の医療危機を招いた根本的な要因に目を向ける必要もあろう。
医師の数自体は増えている。偏在するのは激務の外科や産婦人科などが敬遠され、勤務地も都市部の希望が多いためだ。2004年に始まった臨床研修制度で、研修医が各診療科を回りどこが大変か見極めるようになったことが影響したとされる。
国は医師の負荷を減らすタスクシフト(業務移管)を進め、15年には一定の医療行為ができる特定看護師が制度化された。ただ養成や雇用にかかる現場の負担が重く課題となっている。
地方では幅広い病気を診て、専門医の治療が必要かを判断する総合診療医のニーズが高い。国は現場に必要な人材づくりに一層取り組まねばならない。
元稿:北海道新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月27日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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