【社説・11.27】:マイナ保険証移行 併用で国民の選択肢守れ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.27】:マイナ保険証移行 併用で国民の選択肢守れ
政府は健康保険証の新規発行を12月2日から停止し、マイナンバーカードに保険証機能を持たせた「マイナ保険証」の利用を基本とする運用に移行する。
しかし、このまま実施してよいのか。国民の不信感は根強く、マイナ保険証の利用率が低迷している。現行の保険証の併用を認め、国民の選択肢を守る必要がある。
医療機関でのトラブルがマイナ保険証の不信につながっている。全国保険医団体連合会(保団連)の調査では、回答した1万2735医療機関の70.1%に当たる8929医療機関がことし5月以降、トラブルを経験したと回答した。マイナ保険証を端末で読み取れなかったり、情報が文字化けしたりすることがあった。トラブル・不具合は県内でも報告されている。
不信感が増幅したのは、2023年に発覚したマイナンバーのひも付けの誤登録が大きく影響している。他人の情報が誤って登録されていたことが相次いで分かった。医療分野の個人情報は健康や命に関わる。政府は総点検をしたが、信頼回復にはほど遠い。
保険証の新規発行が停止されても、発行済みの保険証は有効期限内であれば、25年12月1日まで使える。マイナ保険証がない人には保険証の代わりに使うことができる資格確認書が届く。ただ、猶予期間が設定されていることや確認書での代用などが十分に周知されているとは言えない。
沖縄県内はマイナカード保有率、マイナ保険証利用率とも全国平均を下回り、全国で最低の水準である。従来の保険証の発行廃止に不安を感じる方も多いはずだ。
政府はマイナカードを「デジタル社会のパスポート」と位置付ける。健康保険証の廃止とマイナ保険証に一本化する方針も、マイナカードの普及を目指してのことだ。
各種世論調査では一本化に賛成の声もあり、マイナカードの機能を充実させることへの期待もあろう。マイナ保険証は「選択肢の一つ」ならば、国民の理解はある程度進むだろう。一本化の方針を固執する政府の姿勢はあまりにもかたくなではないか。利用の選択肢がなくなれば、高齢者への影響が大きい。個人情報の取り扱いに不安を抱く人たちを取り残して施策を強行する理由はない。
医療分野でデジタル技術を用いることで業務効率化を図ることができるということも施策を推進する理由だ。医療機関にとっては患者情報の把握などでメリットもあろう。だが、デジタル化を進めることで国民が不便や不安を感じることが増えるとすれば、何のためのデジタル化か。
マイナカードの取得は任意である。にもかかわらず、マイナ保険証への一本化を推し進めることはカード取得の事実上の義務化である。現行の保険証との併用など、選択肢を確保して、不安の払拭を図るべきだ。
元稿:琉球新報社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月27日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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