【卓上四季】:ひのき舞台の柱
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【卓上四季】:ひのき舞台の柱
京都の世界遺産・清水寺の本堂の改修工事が終わった。屋根の檜皮(ひわだ)のふき替えは半世紀ぶり。舞台の板も全面的に張り替えられ、寛永10年(1633年)の再建当時の趣までがよみがえったようだ▼阿弥陀堂や奥の院を含めた総工費は約40億円。2008年に開始した一大プロジェクトは年度末で終了するが、すでに次の改修を目指した準備も始まっている。20年前から京都府内で取り組むケヤキの植林活動だ▼高さ約13メートルの舞台を支える柱は樹齢約400年。耐久年数は樹齢の倍程度だから、現在の柱の寿命は約400年後。その時の建材として育てようという計画である。長い目で物事を捉える大切さを教わる▼2020年は将来、どんな位置づけで語られるのだろう。日本漢字能力検定協会(京都市東山区)がきのう、「今年の漢字」が「密」に決まったと発表し、清水寺で森清範貫主が和紙に揮毫(きごう)した▼選択理由では、コロナ禍で人間関係の大切さを痛感した一方、密室政治という喜べないものもあった。同調圧力や自粛警察の登場で遠のいた心の距離も密にしたいものである▼清少納言が枕草子で「さはがしきもの」と記した清水寺の縁日。産寧坂のにぎわいが、うそのように静まりかえることもあった年が暮れる。行く末は、「舞台から飛び降りる」覚悟を求められるのではなく、誰もが「ひのき舞台」を踏める年となるように願いたい。2020・12・15
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【卓上四季】 2020年12月15日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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