《社説①》:裏金事件の政倫審 目に余る自民の迷走ぶり
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①》:裏金事件の政倫審 目に余る自民の迷走ぶり
派閥裏金事件を審査する衆院の政治倫理審査会を巡り、自民党の迷走ぶりが目に余った。政治に対する国民の不信を本気で払拭(ふっしょく)するつもりがあるのか。これでは疑わざるを得ない。
29日に岸田文雄首相らが出席し、ようやく開かれることとなった。当初、安倍派幹部ら5人が出席して28日から開催することで与野党が大筋合意していたが、ずれ込んだ。全面公開での審査を主張する野党に対し、自民が難色を示し、折り合いが付かなかったためだ。
事態の膠着(こうちゃく)で窮地に追い込まれた首相が、自らの出席を表明するという奇策に打って出た。公開での質疑を拒んでいた安倍派幹部も応じざるを得なくなった。
深刻なのは、この間に明らかになった自民の統治不全だ。
本来なら首相が党総裁として関係議員に対し出席を指示すれば済む話である。にもかかわらず、「国会で決めていただく」と繰り返し、行き詰まるまで積極的に動こうとした様子はうかがえない。
関係議員が出席を渋って逃げ回る中、党執行部も互いに責任を押し付け合うような振る舞いに終始し、当事者意識を欠いた。
国民への説明責任を果たすという当たり前のことすら決められず、混乱を長引かせた。
開催するのであれば、真相解明につなげなければならない。
最大の焦点は、安倍派が長年どのように組織的な裏金作りを続けてきたかを明らかにすることだ。
少なくとも森喜朗元首相が派閥会長だった約20年前から行われていたというが、始まった理由や経緯は判然としない。
2022年には当時会長だった安倍晋三元首相が一旦中止する方針を示したという。にもかかわらず、安倍氏の死後に誰の判断で継続することになったのか。安倍派幹部の「5人衆」は知り得る立場にいたはずである。
裏金が何に使われたかも問題だ。政治資金収支報告書に派閥パーティー券収入の還流や「中抜き」を不記載とした全議員が、使途を明らかにする責任がある。
安倍派幹部らは政倫審で実態をつまびらかにすべきだ。「知らぬ、存ぜぬ」と繰り返すだけでは、政治家としての「倫理的義務」を果たしたことにはならない。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年02月29日 02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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