【社説①】:BRICS拡大 途上国は中露に躍らされるな
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:BRICS拡大 途上国は中露に躍らされるな
国際秩序を踏みにじる中国やロシアのような強権国家が世界の安定した発展に貢献できるとは思えない。途上国は、中露への加担が何をもたらすのかを熟考すべきだ。
ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカで構成する新興5か国(BRICS)が、南アで外相会議を開き、8月の首脳会議までに加盟国拡大の指針をまとめることを決めた。
拡大の構想は昨年、中国が提案し、中東やアフリカなどの20か国以上が加盟に意欲を示しているという。今回の外相会議にはサウジアラビアやイラン、インドネシアなど13の非加盟国が招かれた。
BRICSの人口の合計は、全世界の4割に達している。世界の国内総生産(GDP)の合計に占める割合も3割弱で、先進7か国(G7)の4割に迫る勢いだ。米欧日と新興国との、パワーバランスの変化を象徴している。
BRICSでは、中国の国力が突出して大きい。加盟を希望する国は、中国の経済援助や、BRICSが主導する金融機関からの融資を期待しているのだろう。
「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国や途上国が、国益を求めてBRICSに接近する動きを止めることはできない。
問題は、中露がBRICSで強調する「米欧への対抗軸」や「世界の多極化」は、中露の利益が最優先される国際秩序を意味し、自由や法の支配といった普遍的価値の軽視につながることだ。
加盟を検討している新興国・途上国は、自由で民主的な社会や国民生活の安定を守るためには、現行の国際秩序が不可欠であることを認識してもらいたい。
BRICSを拡大する速度や規模を巡っては、前のめりな中露と慎重なインドの間で温度差があるとも指摘されている。
「グローバル・サウス」の盟主を自任するインドは、米欧と中露のどちらにも傾斜しない中立的な外交姿勢をとる。ウクライナ侵略を巡る対露制裁は控える一方、日米豪との協力の枠組み「クアッド」には参加している。
BRICS拡大を通じて中国が影響力を増大させ、主導権を握る事態を、インドは望むまい。拡大は一筋縄ではいかないだろう。
岸田首相は5月のG7広島サミットにインドとブラジルの首脳も招待し、グローバル・サウスとの連携強化を確認した。日本は各国に普遍的価値の重要性を説きながら、経済や技術分野などで協力を深めることが大切だ。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年06月09日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます