【社説②】:IPEF会合 供給網強化を連携の第一歩に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:IPEF会合 供給網強化を連携の第一歩に
インド太平洋地域における経済活動のルール作りに、米国が関与することは重要だ。サプライチェーン(供給網)の強化策をてこに、米国主導の経済圏を発展させたい。
米国が提唱し、14か国が参加する経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の閣僚会合が開かれ、供給網に関して協力することで実質合意した。昨年5月の発足以降、初の成果となる。
半導体や鉱物などの重要物資が不足した際に各国が融通しあう協定を締結することを目指す。多国間で供給網についての協定をまとめるのは初めてだという。
コロナ禍では、半導体の調達難が自動車などの生産を滞らせ、また、マスクや消毒液などの医療物資が足りなくなった。感染症の拡大や紛争などに備え、供給網の強化で協力するのは理にかなう。
IPEFは日米韓、豪州、インドなどのほか、東南アジア諸国連合(ASEAN)からも7か国が加わっている。
米国が、環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱した後、中国がこの地域で影響力を拡大しつつある。そうした状況下で、米国がアジア経済への関与を続けるために創設したのがIPEFだ。
供給網、貿易、クリーンな経済、公正な経済という4分野でルール作りを進めるという。
ただ、TPPと違い関税撤廃は含まれていない。米国への輸出を増やしたいアジアの国にとっては利点が少ないとの見方がある。
まず、供給網についての協力で合意したのは、多くの国から賛同を得やすい分野だからだろう。連携を深める一歩としてほしい。
合意には、重要物資の中国依存度を下げる狙いがある。中国は、市場の支配力を武器に、対立する国への物資の輸出を禁じる「経済的威圧」を繰り返している。
特に、太陽光パネルや電気自動車(EV)の蓄電池に不可欠な鉱物資源で、高いシェア(占有率)を持つことが懸念されている。中国に頼らない供給網を構築する具体策を詰めてもらいたい。
一方、ASEANには、中国と経済的関係が深く、過度に中国を刺激したくないという国も多い。日本は脱炭素の支援など「実利」を提供しながら、米国との橋渡し役を務めることが大切になる。
中国は地域包括的経済連携(RCEP)に加わり、TPPにも加盟申請している。それを強く 牽制 するためには、米国のTPP復帰こそが必要だと、日本は米国に説き続けるべきだ。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年05月31日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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