【社説②】:英TPP加盟へ 高レベルの自由貿易広げたい
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:英TPP加盟へ 高レベルの自由貿易広げたい
環太平洋経済連携協定(TPP)に英国が加わることになった。サプライチェーン(供給網)の分断が進む中、日本と英国は協調して自由貿易の推進を図ってほしい。
TPPに参加する日豪などの11か国は、オンラインで閣僚会合を開き、英国の加盟を認めることで合意した。7月の閣僚級会合で協定に署名し、各国の手続きを経て正式に加入が決まる見通しだ。
TPPが2018年12月に発効して以来、新たな国が参加するのは初めてとなる。
英国は欧州連合(EU)を離脱したため、EU域外の国との連携を重視しているという事情はあるものの、TPPによる自由な経済圏がアジア太平洋地域から欧州へと広がる意義は大きい。
TPP参加国の国内総生産(GDP)は、世界3位である日本が突出して大きかった。6位の英国が入ることで、TPPの存在価値が増すことは間違いない。
TPPは、関税を100%近く撤廃するほか、国有企業への不公正な補助金の制限や知的財産権の保護、データ流通の促進など、高いレベルの自由化ルールを定めている。英国は、これらのルールを受け入れたとみられる。
米国と中国の対立が激化していることに加え、ロシアのウクライナ侵略で世界の供給網は大きな打撃を受けている。自由貿易体制は揺らいでおり、その推進役であるはずの世界貿易機関(WTO)の機能不全も著しい。
英国は、自由貿易主義のほか、民主主義や法の支配といった価値観を日本と共有している。日英は連携を深め、供給網の強化や貿易の促進に努めることが重要だ。
自由貿易体制を守るために、TPP加盟国の拡大も進めたい。
TPPには、中国、台湾、エクアドル、コスタリカ、ウルグアイが加盟を申請しており、今後は中国の扱いが焦点となる。
中国は、政府調達で外国企業を実質的に締め出す傾向を強めており、補助金による国有企業の優遇も問題視されている。現状では、高い水準の自由化が求められるTPP参加は難しいとみられる。
加盟国を広げることが大事だとはいえ、ルールを緩めて加入を認めることはあってはならない。
一方、もともとTPP交渉を主導した米国は、トランプ前政権時代に離脱した。バイデン政権も自国の雇用を優先する立場は変わらず、復帰の機運は乏しい。日本は英国の協力を得て、改めて米国に復帰を働きかけるべきだ。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年04月03日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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