【社説②】:英国TPP加盟 緊張緩和につなげたい
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:英国TPP加盟 緊張緩和につなげたい
英国が環太平洋連携協定(TPP)に参加することが決まった。自由貿易圏の拡大に直結する動きで意義は大きい。米中対立が先鋭化する中、英国の加盟を緊張緩和につなげる起点としたい。
TPPに参加する日本を含む十一カ国は三月三十一日、英国加盟で合意した。今夏に関係閣僚が協定に署名し各国の国内手続き完了後に正式加盟となる段取りだ。
TPPの最大の特徴は域内関税の100%撤廃を目指す点にある。国内産業への補助金の制限や知的財産をめぐる強力な保護策なども加え、域内貿易の完全自由化を図る取り組みだ。
貿易の自由化は輸出入の拡大で消費を刺激して経済成長を促す。欧州連合(EU)離脱の影響に苦慮する英国がアジア太平洋に注目し、TPPをテコに経済の再活性化を目指したことは理解できる。
ただ英国が加入しても参加国の国内総生産(GDP)総額が世界経済に占める割合は15%にすぎない。その理由は米中が参加していないことに尽きる。
中国は加盟を申請しているが、その道のりは険しい。TPPに入るには域内ルールを厳格に守る必要がある。知的財産権の扱いや国営企業への補助金などを巡り自国の正当性を強く主張する中国が、ルールの厳守を約束して加盟する可能性は今のところ低い。
しかし中国との交渉が二〇一七年に離脱した米国を刺激し、米国復帰に道を開く契機となる可能性は否定できない。国内経済の停滞に直面する中国が一定の譲歩に踏み切る展開もあり得るだろう。
TPP加盟国の米中に対する立場には隔たりがある。英国を含めた十二カ国は意見を集約した上で米中に粘り強く参加を促し、TPPを緊張緩和に向けた舞台として活用すべきだ。
日本は半導体分野の輸出規制に乗り出すなど、TPPが掲げる自由貿易の精神に反する姿勢が目立つ。経済のブロック化は確実に国益を損なう愚策だ。官民を問わず、この歴史の教訓を肝に銘じてほしい。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年04月05日 07:14:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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